マルカメムシ(№64)

 1月の寒い日、和泉試験地の整理をしていたところ、コンパネの裏側に丸い点々を見つけました。小さなキノコかなと思ったのですが目を近づけてよく見ると越冬中のマルカメムシの集団でした。
 このカメムシは春になると、卵を2列に並べて産みます。5~10月頃、クズ、ダイズ、アズキなど豆科の植物を中心に、その汁液を吸っています。この時点では害虫の一種として片付けられるのですが、秋口になると越冬場所を求めて飛び回り、洗濯物などと一緒に家の中へ取り込まれることもあります。こうなると、当の洗濯ものだけでなく、部屋中がいやなにおいで満たされることになります。このにおいは防御物質、あるいは仲間に対する警戒フェロモンとも言われています。いずれにしろ人間にとっては、クサギカメムシ同様臭さ加減ではピカイチのカメムシに入ります。
 このカメムシの成虫は、よく見ると翅らしいものが見えません。これは胸の一部の小楯板と呼ばれる部分が発達して腹部を覆っているためで、薄い翅がその下に折りたたまれていて、飛ぶときには腹部と小楯板の間から翅を伸ばします。
 集団で越冬する昆虫は、カメムシやテントウムシが知られています。ところで、なぜ集団になるのでしょうか。何かメリットがあるのでしょうか。それとも寂しがりやかな。
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▲コンクリートパネルの裏のマルカメムシ
▲マルカメムシ

シナサワグルミ(№65)

 堺市内の公園の一部にシナサワグルミの木が植えられています。これらの落葉樹は、秋になると葉(正確には葉の付いている柄=葉柄)とえだのあいだに離層と呼ばれる部分が出来て落葉の準備を始めます。葉と枝の間には、水や養分の通路として維管束と呼ばれるパイプが通っています。この維管束も離層部分で閉鎖されますが、その痕跡が残ります。
 左上の写真はシナサワグルミの葉が落ちた跡(葉痕=離層の出来た部分)です。葉柄の痕跡が顔の輪郭で、維管束の跡(維管束痕)が2個の目と鼻のような形に見えますね。
 写真の右上はシナサワグルミの若い枝の葉痕で子猫に似ていませんか。下はオニグルミの葉痕です。こちらは羊に見えませんか。
冬、葉を落とした木の葉痕を見て歩くのも楽しいものですよ。
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▲シナサワグルミ葉痕
▲シナサワグルミ若枝葉痕
▲オニグルミ葉痕

ミドリシジミ(№66)

 ゼフィルス(ミドリシジミ類=5月の風)と言われる非常に綺麗なシジミチョウの一群がいます。写真右下が成虫で私の標本です。南大阪ではその種類も数も少ないですが、昨夏(2008年)、長年の休耕でハンノキ林になった水田跡でかなり多くのミドリシジミ成虫を見つけました。チョウの仲間は完全変態(卵ー幼虫ー蛹ー成虫)と変態しますが、越冬の仕方はまちまちです。ミドリシジミは食草であるハンノキの幹や枝に生まれた卵で冬を越します。
 粉雪のちらつく冬の日に、このハンノキ林で観察しました。直径0.5mm程度で、やや青みがかった卵が見つかりました。拡大してみると、中央がくぼみ、複雑な模様をつけた卵です。
 ハンノキは背が高く、産卵場所も決まっていないためこの卵しか見つけられませんでしたが、もっとたくさん生まれているに違いありません。春、ハンの木の新芽が出る頃、幼虫がかえり、ハンノキの葉を食べて成長します。
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▲ハンノキの林
▲ミドリシジミの卵
▲ミドリシジミ成虫

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