ロウバイ(№.318)

 早春、「まず咲く」から名付けられた花木に「マンサク」がありますが、それより早く咲くものに「ロウバイ」があります。「マンサク」を春の花とすれば、「ロウバイ」は冬の花といえるでしょう。すっかり葉を落とした枝に透き通るような黄色の花をつけ、芳香を放つロウバイは単調で重い冬の庭に一点の温か味さえ感じさせてくれます。
 ところで、今年のロウバイは1月になっても大きな葉が茂り、一向に咲いた気配がしません。しかしよくみると、葉の陰に花が開いているのに気づきます。ロウバイは元々落葉低木で、12月には殆どの葉を落としてしまいます。枝だけになったロウバイは、直径2~3cm、透き通るような黄色で中央部が紫褐色の花をやや下向きに咲かせます。しかし今冬は暖冬のせいでしょうか、葉が落ちず枝に付いたまま、花が咲き始めました。そのため、香りはしますが、花は大きな葉の陰に隠れるようにひっそりと咲いています。 やがて果実(花の付け根の花托が大きくなったもので偽果と呼ばれる)をつけますが、中の種子はアルカロイドを含む有毒植物です。漢方では鎮咳、解熱に使われるそうです。 園芸品種として花被(この花は、ガクと花弁の区別が難しく花被と呼ばれます)が黄色一色のソシンロウバイ(№173)、花被の大きいトウロウバイ(ダンコウバイ)、花被中央に紫褐色のリングの入るマンゲツロウバイなどがあります。
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ロウバイ1
ロウバイ2
▲1月でも遠めには葉しか見えないロウバイ
▲葉陰に見えるロウバイの花
ロウバイ3
ロウバイ(ソシン)4
▲ロウバイの花
▲ソシンロウバイの花

リュウノヒゲ(タマリュウ)(№.317)

 季節的に緑が少なくなった庭に濃い緑を提供してくれる地被植物の代表がリュウノヒゲ(ジャノヒゲ)です。日本を始め東南アジア原産で、学名をOphiopogon japonicusといいますがophio=リュウ(蛇)、pogon=ひげの意味のギリシャ語で日本語を直訳したような学名となっています。
 ユリ科の常緑植物で、年中濃い緑を保っています。草丈10~20cm、7~8月に白い花を咲かせ、冬季にピンポン玉を小さくしたような直径5mm程度のブルーの種子をつけます。花や種子は観賞の対象とはなりませんが、どのような環境にも耐え、丈夫で年中グリーンであるところから庭園の根占や境界などに広く利用されています。芝生感覚で刈り込むこともできます。常緑であるためか花言葉は「変わらぬ想い」となっています。 冬に見られる種子は、種そのものがむき出しになっているもので、ヤブラン(№101)の場合と同じつくりになっていて、雌しべの痕跡が見られません。この種子の皮をむくと白い小さな玉が出てきますが、これはスーパーボールのようにコンクリートの上で跳ね飛ぶため、かつては子供のおもちゃとなりました。 リュウノヒゲの根部は部分的に肥大しており、この部分をバクモンドウといって鎮咳、強壮などの薬効があり漢方の生薬として使われます。主として地下茎を伸ばして増えていきます。園芸品種として、草丈の低いタマリュウや白い斑入りのハクリュウなどがあります。また、葉の黒っぽいコクリュウや葉の大きいオオバジャノヒゲなどもありますが、これらはリュウノヒゲに似た別種です。
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りゅうのひげ1
▲リュウノヒゲ
▲リュウノヒゲの種子
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▲タマリュウの一部肥大した根部
▲地下茎で増えるタマリュウ
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▲根占に使われたタマリュウ

シャガ(№316)

 冬の寒い時期にもつやのある青々とした葉をしているあやめ科の植物があります。人里近くの、日陰でやや湿ったところに自生しますが、たまに庭園の根占などに使われることもあります。4^5月頃にあやめのような花をつけるシャガです。
 花は白弁と薄青弁のものがあり、濃い紫と黄色の模様をつけたなかなかきれいな花です。花びらはあやめと同じくガクと花弁の区別が出来ないため花被と呼ばれます。葉が目立ちすぎるためか、あるいは草丈が50~60cmと高すぎるためかあまり庭園用としては人気がありません。中国原産の植物ですが、日本では3倍体が導入されたため、種子をつけません(中国では2倍体が存在し種子をつけるそうです)。したがって、日本では自生種を含め、すべて同一の遺伝子を持った個体(クローン)しか存在せず、地下茎で広がるか人為的な拡散以外に広がることが無いため、人里離れた深山で見ることはありません。 ところで、シャガの葉は刀の刃のような形をしていますが、裏表はあるのでしょうか。葉の付け根を見ると中心部を巻き込むようになっているのがわかります。しかし先へ行くと中肋(中心の葉脈)を折り目に葉の表同士がくっついたようになっています。つまり、人の目に触れるシャガの葉はどちらの面をとっても葉の裏だということです。このような構造の葉を単面葉といいます。ところで、シャガの葉はまっすぐ立ち上がらず、必ず一方が上、反対側が下になります。これは、上側と下側の葉での成長が違うために起こるようですが、上側の葉は細胞が均一化されつやがあり葉を保護する働きがあるようで、通常(両面葉)
の葉表の役目をしています。一方、下側の葉の細胞は大小さまざまでつやも無く、葉脈や気孔が多く存在します。つまり下側の葉は葉裏の役目をしているようです。同じ葉裏起源ですが、それぞれの環境(上下)に合わせた適応をしているのでしょう。
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しゃが1
しゃが花JPG
▲シャガの葉
▲シャガの花
しゃが葉4
▲地下茎で広がるシャガ
▲シャガの葉の基部
しゃが3
▲シャガの葉(左:上面、右:下面)

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