コウヤマキ(№280)

 造園で使う庭木にホンマキというのがあります。これはコウヤマキのことです。庭木としてはイヌマキ(マキ科マキ属)がよく使われ、剪定することで庭のシンボルツリーにもなり、防風垣や生垣としても使用できる便利さから重宝がられています。
 コウヤマキはマツ目コウヤマキ科コウヤマキ属で1属1種に分類されています。もともと北半球に広く分布していたようですが、現在、北海道を除く日本と韓国済州島だけに残っています。この木の自然樹形は写真のようにきれいな円錐形で、高さ30mぐらいまで成長します。木材としては腐りにくい性質から浴槽、水桶、橋杭、船材、棺おけなどに使われ、枝は切花、特に仏花として利用されます。高野山には多数の人工林がありコウヤマキの名前の由来になっています。
 常緑針葉樹で幅3mm程度、長さ5,6cmの細長い葉が、長枝の1節から15~40枚輪生しています。この葉の断面を見ると裏も表も中央部がくぼんでいる事がわかります。これは、もともと2枚であった葉の側面どうしがくっついた結果1枚になってしまったからだそうです。そのため、葉先も2つに分かれています。また、裏面にある気孔は直線状に連なり、中央に1本
の白線状(気孔線)になっています。
 コウヤマキは世界の3大庭園木(コウヤマキ、ヒマラヤスギ、アロカリア)、高野6木(コウヤマキ、モミ、ツガ、ヒノキ、スギ、アカマツ)、木曽5木(コウヤマキ、ヒノキ、サワラ、ネズ、アスナロ)のいずれにも数えられる銘木です。(*画像をクリックすると拡大されます)
▲コウヤマキの自然樹形
▲コウヤマキの葉

ホソヘリカメムシ(№281)

 昆虫たちも、寒い冬を越すためににいろいろな工夫をしています。卵、蛹、幼虫それぞれの形で冬を越すものもたくさんいますが、成虫の形で冬を越す昆虫たちもたくさんいます。成虫で冬眠するカメムシ類の多くは樹皮や石の下、物陰などで寒風を避けながら春を待つものが多くいます。
 冬の比較的暖かな1日、冬眠場所から陽の光を求めて出てきたカメムシを見つけました。春から秋まで、豆類の害虫として嫌われるホソヘリカメムシの成虫です。体長13~17mm、全体が茶褐色の細長いカメムシです。体の特徴としては、後脚が長く、腿節(もも)に後方に向けた棘(トゲ)が生えています。歩く姿はがに股でいかにも不恰好ですが、飛ぶと長い足がアシナガバチに似ています。これも一種の擬態でしょうか。幼虫はアリそっくりの形をしており、天敵から逃れるための擬態と思われます。カメムシ類は臭いにおいを出して身を守りますが、ホソヘリカメムシはそれほど強い匂いを出しません。そのために、このような擬態をしているのかもしれません。
 成虫、幼虫共に豆類の茎葉や果実に口吻(針のようにとがった口)を刺し、汁液を吸収します。そのため果実(豆)に汚点が付いたり変形したりするため農家からは嫌われますが、幼虫がアリそっくりなためその発生が見落とされることがあるようです。ホソヘリカメムシの幼虫がアリに擬態していることは、最大の天敵である人間から身を守るために役立っているようです。
(*画像をクリックすると拡大されます)
◀ホソヘリカメムシ成虫

アカマツ(№282)

 本記事の№167 クロマツでマツの葉と枝について、№246でマツカサについて述べましたが、今回は日本の代表的なマツの1つであるアカマツを取り上げてみます。
 アカマツは内陸性のマツで、海岸に多いクロマツとは住み分けが見られます。アカマツの葉はやや細く、葉先を握っても痛くありません。そのようなことからアカマツを雌マツ、クロマツを雄マツと呼ぶこともあります。
 マツは陽樹(陽のあたるところを好む植物)で、人はかつて火力の強いマツを登り窯(陶器を焼く釜)の燃料とし、枝葉は焚きつけに、根に共生するマツタケは食料として利用しアカマツを育ててきました。人手が入らなくなると広葉樹に負けてしまいマツ林を維持できなくなることから、最近は松林の減少が多く見られます。
 アカマツの葉は細長い葉が2枚ありますが、これは短枝から出ています。植物の葉には、炭酸ガス、酸素や水分の出入り口としての気孔がありますが針葉樹ではこの気孔が集まって種特有の並び方をしているのを観察することが出来ます。気孔の周囲にはワックスがあり気孔が集まると白く見えます。マツでは写真のように1直線状に並んで見えます。アスナロではW字状、サワラではX字状、ヒノキではY字状となります。
 ところでマツの2葉が出ている短枝を取り巻くように薄い膜状のものが見えることがあります。これは、発生学的には細長い針葉と同じ起源の葉(相同の葉といいます)だそうです。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲アカマツ林
▲アカマツの葉
▲アカマツの葉(気孔線)

ページトップへ