八月が終わりました。皆様もそれぞれの八月を過ごされたことと思います。
私は、例年の通り夫の実家でお盆の支度をしていました。
もう、三十年も同じ事をしています。
大阪のあまり伝統のない家に育った私にとって、お盆をとても大切な行事とする夫の実家は、実に大きなカルチャーショックでした。
山の古いお墓の掃除から、準備ははじまります。
花や線香を供え、夕暮れには明りを灯し、朝夕、玄関口でキビガラを焚きます。
ほおずき・蓮の葉・きゅうりの馬とナスの牛を飾り、お膳は日によっておはぎ・素麺。焼きナス・赤飯などメニューが少しずつ変わります。
13日には白い粉をまぶした団子、16日にはきな粉をまぶした団子を作ります。
他にも細かな決まりが色々ありますが、新婚の頃は、アタフタとして、何もわからないまま言われるままに過ごしました。
子どもができてからは「暑い~」「疲れた~」「虫に刺された~」と、ぐずる子どもを抱えて、やはりアタフタと言われるままに過ごしました。
当時の私にとって、他の季節はとにかくお盆は、暑くて渋滞する高速道路をはるばる出かけて、「疲れる」「 気が重い」だけの季節でした。
もちろん、同居してずっと家を支え続けるお嫁さん方に比べれば、文句など言える立場ではありませんが、とにかく、古い家特有の匂いも、線香の煙も、西日の差す障子も、あの頃は何もかもが好きになれませんでした。
あれから、長い年月が流れました。
古い家はもう、誰も住んでいません。
お盆の支度は、空き家の掃除から始まります。
でも、余裕が出たからでしょうか?
それとも自分のペースでできるからでしょうか?
あの頃ほどは、苦に感じないのです。
そして、古い家の匂いも 、線香の煙も、今ではどこか懐かしい気持ちになれます。
親戚が集まって、古いアルバムを見ながら、昔話をすると、先祖の事を知るだけではなく、夫や子どもたちのルーツをたどれるような面白さを感じます。
きっと嫁はみんな、その時々に色んな思いを乗り越えながら、こんな風にその家々に馴染んでいくのでしょうね。
とにかく、夏の大きな義務は果たしました。いよいよ待ちわびた秋が来ます。折々に、わずかに感じられる秋の兆しを見つけ出しては、ゆっくりじっくり楽しむ事にします。 |