光が溢れ、柔らかな新緑が風にそよぐ、いい季節になってきました。 朝、窓を開けると、満開のハナミズキ、モッコウバラ、ラベンダー、ドウダンツツジが目に飛び込んできます。 (余談ですが、この時期のドウダンツツジは、満天星という漢字がぴったりです。) 爽やかで美しくて、こんな朝には庭に出るのが本当に楽しみです。
最近は、朝にもう一つ楽しみがあります。NHKの連続ドラマです。 私が特に好きなのは、オープニング映像です。 青空をバックにしたグリーンゲイブルスを見ると、毎朝の事なのに小さく歓声をあげてしまいます。 何度かこの欄で書いた事がありますが、私は「赤毛のアン」とそのシリーズが大好きです。 小学生の誕生日に父に買って貰ったのがきっかけで、夢中になっていました。
当時、私の住んでいた所は、便利ではあったけど、あまり自然は豊かではありませんでした。 近くを流れる運河は、コールタールのように黒く澱み、ポコッ、ポコッとメタンガスが発生していました。 車の音、密集した近所の生活音でいつも騒々しく、風向きによっては近くの工場の薬品臭が漂ってきました。 でも、現実はどうであっても、本さえ開けば、そこには美しい自然、生き生きした少女の世界が広がります。 私の心は、きっと別の世界にタイムスリップしていたのでしょう。 薄暗くなった部屋の隅で、ランドセルを背負ったまま、じっと本を読んでいる状態で見つかり、母を呆れさせた事が何度もありました。 時々、アニメやファンタジー小説などで、主人公が本の中の異世界にスリップする話がありますが、あんな風に本の世界に入り込む感覚はとてもよく分かります。 あの頃の私は、時空を超えて、カナダのプリンスエドワード島で過ごしていたのかもしれません。
だからでしょうか?朝のドラマのオープニング映像で、グリーンゲイブルスが映ると、自分の故郷が紹介されたような、懐かしくて誇らしい気持ちになります。 恋人の小径も、輝く湖水も全部、思い描いていた私の記憶そのままに思えます。 泉北ニュータウンの自然は豊かです。 もう、本の中に逃避しなくても、美しい光景はふんだんにあります。 でも、今でも、新緑の並木道、道端に咲く花たち、遠く広がるなだらかな丘を目にすると、時々あの頃の感覚が蘇ってきます。 いつか、懐かしいプリンスエドワード島に行ってみたいです。 そこに行ったら、幼いままの自分自身が出迎えてくれるような、そんな気さえします。
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