2014年5月(May)

 柔らかな新緑に五月の明るい光が注ぐ、さわやかな季節です。皐月の皐という字は白い光を放つ様子を示したものだそうですが、今のまばゆい季節にピッタリですね。エコ・ワークスの庭は、緑も花もくっきりと透明感がある色彩で、生命力が溢れて見えます。

イベリス(アブラナ科)
南ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアにおよそ20~30種が分布します。一つの花は小さいですが、1カ所にまとまりボール状になります。花色は白が多く、ピンク、赤、紫などがあります。花びらは4枚で外側2枚が大きく、内側2枚が小さくなっています。英名はキャンディタフトで「お菓子の花」という意味です。株一面にふんわりと花を咲かせる姿に由来するとされています。イベリスの名前はイベリア(半島)から来ており、イベリスの多くの種が自生しているところに由来します。

タイム ロンギカウリス(シソ科)
タイムはシソ科イブキジャコウソウ属の植物の総称で、約350種ほどある芳香を持つ多年生植物です。写真のタイム ロンギカウリスは地中海西部沿岸地域の乾燥地のゆるい傾斜地に自生していす。匍匐性で、花期以外は高さ3cmほどで這うように四方に枝を伸ばして成長しますが、花期には花穂を高さ5cmほどに伸ばし茎の先にボンボンのように淡いピンク色の小花をつけます。グランドカバーにも利用され、強健で夏場の暑さにも比較的強い品種です。

モッコウバラ(バラ科)
中国が原産の常緑つる性低木です。花は白か淡い黄色で、それぞれ一重咲と八重咲があり、直径2-3cmの小さな花を多数咲かせます。バラと違って一期しか咲きません。黄花の一重や白花には芳香があります。伸長力が旺盛で、バラの短所である棘がなく、病気、害虫にも強いです。花言葉は「初恋」「純潔」「幼いころの幸せな時間」

オオアラセイトウ(アブラナ科)
中国原産。春から初夏にかけてダイコンの花に似た一重で紫色の花が咲き ます。こぼれダネでも増える強健な性質で、日当たりと水はけがよければ群生するように広がります。ショカツサイ(諸葛孔明が食糧用に広めたとの伝説)ムラサキハナナ、ハナダイコン(ヘスペリスの正式名称がハナダイコンなので異論もあります。)とも呼ばれます。牧野富太郎が名付けたオオアラセイトウが正統な名とされました。なお、アラセイトウはストックの和名です。花言葉は「知恵の泉」

アルメリア(イソマツ科)
園芸で「アルメリア」と言うとその1種アルメリア・マリティマを指すのが一般的です。アルメリアは「海の近く」と言う意味で、自生環境にちなみます。マリティマはヨーロッパ・北アメリカ・シベリア・チリなどに広く分布する多年草です。葉は濃い緑色で糸のように細く、春に花茎をひょろりと長く伸ばして、その先端に小さな花を玉状に咲かせます。その花姿と海辺に多く自生するところから、ハマカンザシの和名があります。日本には明治時代に入ってきました。花言葉は「心づかい」「思いやり」「可憐」「共感」

キンギョソウ(ゴマノハグサ科)
地中海沿岸原産。花が金魚の泳ぐ姿に似ているのでこの名がつきました。中国名も金魚草です。学名はギリシア語のアンティリヌム(鼻のような)、英名はsnap-dragon(かみついた龍)、フランス語はgueule-de-loup(オオカミの口)とすべて花の形からの由来です。ところが、写真のキンギョソウは八重でベル咲きで花びらがフリル状になっています。花付きが良くボリュームもあるので豪華ですが、金魚や口や鼻のイメージではありません。
         懐かしい光景

  光が溢れ、柔らかな新緑が風にそよぐ、いい季節になってきました。
朝、窓を開けると、満開のハナミズキ、モッコウバラ、ラベンダー、ドウダンツツジが目に飛び込んできます。
(余談ですが、この時期のドウダンツツジは、満天星という漢字がぴったりです。)
爽やかで美しくて、こんな朝には庭に出るのが本当に楽しみです。

最近は、朝にもう一つ楽しみがあります。NHKの連続ドラマです。
私が特に好きなのは、オープニング映像です。
青空をバックにしたグリーンゲイブルスを見ると、毎朝の事なのに小さく歓声をあげてしまいます。
何度かこの欄で書いた事がありますが、私は「赤毛のアン」とそのシリーズが大好きです。
小学生の誕生日に父に買って貰ったのがきっかけで、夢中になっていました。

当時、私の住んでいた所は、便利ではあったけど、あまり自然は豊かではありませんでした。
近くを流れる運河は、コールタールのように黒く澱み、ポコッ、ポコッとメタンガスが発生していました。 
車の音、密集した近所の生活音でいつも騒々しく、風向きによっては近くの工場の薬品臭が漂ってきました。
でも、現実はどうであっても、本さえ開けば、そこには美しい自然、生き生きした少女の世界が広がります。
私の心は、きっと別の世界にタイムスリップしていたのでしょう。
薄暗くなった部屋の隅で、ランドセルを背負ったまま、じっと本を読んでいる状態で見つかり、母を呆れさせた事が何度もありました。
時々、アニメやファンタジー小説などで、主人公が本の中の異世界にスリップする話がありますが、あんな風に本の世界に入り込む感覚はとてもよく分かります。
あの頃の私は、時空を超えて、カナダのプリンスエドワード島で過ごしていたのかもしれません。

だからでしょうか?朝のドラマのオープニング映像で、グリーンゲイブルスが映ると、自分の故郷が紹介されたような、懐かしくて誇らしい気持ちになります。
恋人の小径も、輝く湖水も全部、思い描いていた私の記憶そのままに思えます。
 
泉北ニュータウンの自然は豊かです。
もう、本の中に逃避しなくても、美しい光景はふんだんにあります。
でも、今でも、新緑の並木道、道端に咲く花たち、遠く広がるなだらかな丘を目にすると、時々あの頃の感覚が蘇ってきます。
いつか、懐かしいプリンスエドワード島に行ってみたいです。
そこに行ったら、幼いままの自分自身が出迎えてくれるような、そんな気さえします。

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