ヤブカンゾウ(№585)

 初夏の草原を歩くと、70~100cm程度の花茎を伸ばし、赤みがかったオレンジ色で直径8㎝程度の派手なユリのような花を見ることがあります。これはススキノキ科(元ユリ科)ワスレグサ属のヤブカンゾウです。
 中国原産の多年草で、3倍体のため種子は作りません。花は雄しべ、雌しべの一部も花弁となった八重咲です。個々の花はほぼ1日花(中には2,3日咲き続けるものもあるそうです)ですが1本の花茎に次々と咲くため花期は数日間続きます。ランナーを伸ばして増えるため群落を作ります。葉は40~60㎝で細長く叢生します。日本全国に分布しています。山菜としても利用され、新芽、蕾、花は茹でてサラダや和え物に、蕾、花はてんぷらなどに使われます。ヤブカンゾウを食べると愁いを忘れることができるそうでワスレグサの別名で呼ばれることもあります。また、乾燥根や蕾は生薬としても利用されます。
 類似種に花が一重のノカンゾウやキツネノカミソリがありますが、キツネノカミソリは有毒植物ですので気をつけましょう。
 名前の似た植物にカンゾウ(マメ科カンゾウ属)やワスレナグサ(ムラサキ科ワスレナグサ属)がありますが全く別物です。
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▲ヤブカンゾウの葉
▲ヤブカンゾウ
▲ヤブカンゾウ
▲ヤブカンゾウ

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ヒオドシチョウ(№584)

 最近、都市近郊で減少傾向にある蝶の一つにヒオドシチョウがいます。かつては食草であるエノキ、シダレヤナギ、ハルニレなど落葉広葉樹の生える丘陵地や山地で3~7月によく見られました。早春3~4月に見られるのは越冬した成虫で痛んでいることが多いのですがこの越冬成虫が春先縄張りを作り、交尾産卵後5~7月に新鮮な成虫が現れます。この成虫は夏には夏眠し、そのまま冬を越し翌春活動を開始します。樹液、獣糞、腐敗果などから吸汁しあまり花には集まりません。
 成虫は開帳6cm程度で、翅の表は赤褐色、大きな黒斑があり、前翅頂(前翅の先端)付近に白斑があり比較的派手な模様をしています。しかし、翅の裏は茶褐色で樹皮に擬態をしており、翅をたたんで樹液を吸っていると目立たなくなります。
 類似種にエルタテハがいますが、関西では滋賀県北部1000m以上の山地で稀に見られることがありますが平地では見られません。
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▲ヒオドシチョウ新成虫
▲ヒオドシチョウ越冬成虫
▲ヒオドシチョウ捕虫網に止まった越冬成虫(翅裏面は樹皮に擬態している)

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オドリコソウ(№583)

 4~6月、人里から少し離れた野山、草原、河原、堤防の法面などでオドリコソウの群落を見ることがあります。シソ科オドリコソウ属の多年草で、日本全国で見られますが最近は減少傾向にあるようです。
 草丈30~60cm、葉は十字対生し茎上部数段の葉腋に白~ピンクの唇形花を数個輪生します。花の形が花笠を被った踊り子たちに見えるところからオドリコソウと呼ばれます。シソ科の植物で茎の断面は四角く中空です。地下茎を伸ばして増えるため群生することが多いようです。
 類似種に帰化植物のヒメオドリコソウホトケノザが見られますがこれらは市街地でもよく見ることができます。
 夏になると地上部は枯れてしまいますが、俳諧では夏の季語になっています。
 山菜として、若芽、若葉、蕾、花などは塩ゆでして和え物、おひたし、汁物、油いためなどに利用されます。また根は薬草として利用されるようです。
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▲オドリコソウ群落
▲オドリコソウの花

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