ヒナノシャクジョウ(№522)

 湿地近くの藪の中をガサゴソと歩いていて、足元に直径1.5cm程度で白色の小さな花を見付けました。頭上の木からの落花とも思えるように点々と見られます。
 よく見ると、落花ではなく高さ1~2cmで1本の茎の上にかたまって開いた小さな花です。その茎には緑色の葉らしいものは見られません。これは、1本の茎の先端に花が3~10個付きまるで1つの花のように見える、ヒナノシャクジョウという腐生植物であることがわかりました。
 7~10月に、やや湿った林内に花開く単子葉植物です。花被(花弁+がく片など)は合着し筒状になった花が数個茎の先端についています。地下から伸びた茎には退化し鱗片状になった葉が互生して3~4枚付いています。根は小さな球状部分から菌根菌の中へ伸びています。関東以西沖縄県まで分布しているそうですが小さな花だけの植物で、生態等詳細は不明な点が多いそうです。
 名前はヒナノ(姫の)シャクジョウ(僧の持つ鉄製輪の付いた杖)の意味だそうです。京都では絶滅寸前種、福井では絶滅危惧1類に指定されています。
 種子をつけるようですが、この花の花粉媒介者は誰でしょうか。
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▲ヒナノシャクジョウの花
▲ヒナノシャクジョウの花
▲ヒナノシャクジョウの花と茎(根は切れています)

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ヘビトンボ(№521)

 ヘビトンボという名前の昆虫がいます。トンボと付いていますがトンボの仲間ではなく、ウスバカゲロウ(アリジゴク)に近い仲間です。
 ヘビトンボ目ヘビトンボ科の昆虫で日本全国の清流で6~9月に成虫が発生します。成虫は体長40mm、翅の開長100mmの大型の昆虫で灯火によく集まります。体は黄色、透明の翅に黄斑があり、静止するときは翅を背中の上で屋根のように重ねます。大あごが発達しており、嚙みつかれるとかなり痛いですが、普段は樹液や小昆虫を食べているようです。
 幼虫は渓流に棲む水生昆虫の一つでマゴタロウムシまたはカワムカデと呼ばれます。清浄な水に発生するため、水質を示す指標生物とされています。幼虫は完全な肉食性で2~3年を幼虫で過ごします。老熟幼虫は陸に上がり、石の下などで蛹になりますが蛹もある程度の活動ができ、大きな大あごをもっていて外敵にかみつくこともできるようです。
 幼虫は日本で独自に誕生した民間薬として子供の疳に利用され、「奥州斎川名産孫太郎」として日本全国に販売されたそうです。現在も奥州斎川(宮城県)には田村神社という神社があり孫太郎虫供養碑や孫太郎虫資料館などもあるそうです。火にあぶって酒の肴にしたり、長野県ではザザムシの一つとして食用に供されることもあります。
 名前は長い頭と大あごでかみつくところから付けられたようです。
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▲ヘビトンボ成虫
▲ヘビトンボ成虫

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キヌガサタケ(№520)

 梅雨期と秋期にカラマツ林や竹林を歩くとキヌガサタケと呼ばれる絹のレースをまとった美しいキノコと出会うことがあります。
 キヌガサタケはスッポンタケ目、スッポンタケ科、スッポンタケ属に分類される二次的腐生菌(ある程度分解された有機質に発生する菌類)です。子実体(菌類が胞子を作るための組織でキノコがこれにあたります)は地下部に少ない菌糸を伸ばし、地上部には直径5~8cmの鶏卵状球体として地上に現れます。この球体が二つに割れ、中から托と呼ばれる白い棒が現れます。托は中空海綿状の組織で先端には基本体(グレバ)と呼ばれる緑褐色の帽子をかぶっており、この基本体の下からレース状の白い傘(菌網)が開きます。子実体が割れ、托が伸び、傘が開くまで数時間と言われています。子実体を支える菌糸は少ないため、傘を開くと全体が傾くことが多いようです。また、大きな傘は直径30cmにもなります。
 グレバは胞子を含んだ粘液を出し、悪臭を放ちます。このキノコの胞子は風で分散するのではなく悪臭?に集まってくる昆虫などの小動物(シデムシ、ショウジョウバエ、イエバエ、タテハチョウ、ナメクジ、ダンゴムシなど)によって分散されます。
 中国では托と菌網を乾燥させ、スープなどに使うそうでフカヒレ並みの高級食材とされています。そのためキヌガサタケの栽培もされているようで、日本でも乾燥品が販売されています。
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▲キヌガサタケ(托の下部に球体がみられる)
▲キヌガサタケ

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