イネ(№484)

 世界の3代穀物はトウモロコシ、コムギ、コメと言われていますが、日本人の主食はコメです。コメはイネの果実を加工したものです。イネは田んぼ(水田)で作られている植物です。稲が開花し、実をつけたものをコメとして利用しているのです。
 イネはイネ科イネ属の植物で、日本には野生種はなく中国から伝わったと考えられています。学名はOryza(イネ)sativa(栽培される)です。植物ですから花を咲かせますが、この花を紹介しましょう。イネは植えられてからしばらくの間、茎の数を増やしていきます。茎の数が十分増えたところで花を咲かせます。それぞれの茎から花の穂を伸ばし、エイ(もみ殻)を開いてオシベを外へ伸ばします。花には昆虫を呼ぶための美しい色の花弁や、香り、蜜はありません。つまりイネは元来風媒花(花粉が風によって運ばれる)なのです。しかし、実際にはメシベもオシベも開花前には十分熟しており、開花と同時に花粉を出すため、98%が自家受粉(自分の花粉で受粉する)してしまいます。イネの開花は午前中の2~3時間で、1つの穂の花は7日程度ですべて咲いてしまいます。このように限られた条件下での開花ですが、自家受粉であるためそのような制約をクリアーしていると言えます。
 昔から人間の都合の良い方向への育種が進められ、非常に多くの品種が存在します。日本人はモチモチ感を好むためでんぷん中にアミロペクチンを多く含む品種を作ってきましたが、世界的には少数派になります。また病気や害虫に対する耐性品種も多く作られ、耐寒性、耐塩性品種の作成で栽培可能地域を拡張してきました。一方、田植えや稲刈りなど労力のかかる作業も機械化により省力化がすすめられ、栽培様式が大きく変化しました。それに伴って、かつては稲の大害虫であり、ヘリコプターによる一斉防除までされていたニカメイチュウも現在では姿を消してしまいました(コンバインの普及によりニカメイチュウの越冬場所である稲わらが細断され水田へ戻されることで越冬できなくなったため)。現在も育種をはじめ栽培技術の改善が進められており、今後どのように変わっていくのか楽しみでもあります。
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▲出穂(開花)中のイネ
▲出穂(開花)中のイネ(オシベをもみ殻の外へ出している)
▲出穂(開花)中のイネ(中央:もみ殻が開き、オシベが外へ)

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