ヌートリア(№573)

 流れの緩やかな河岸や池沼近くで大型のネズミを見られた方は多いと思いますが、これはヌートリアです。
 南米原産の哺乳類、ネズミ目ヌートリア科のヌートリアで、第2次世界大戦以降毛皮用に日本に導入され西日本で飼育されました。しかし、毛皮の需要がなくなり、放されたものが自然増殖し現在に至っています。水辺を離れることは稀で、寒さにも弱いため中部から関西、中四国の一部で見られます。体長(頭~尻、頭胴長)40~60cm、尾の長さ30~40cm、体重5~9㎏、全身茶褐色で目と耳の小さなドブネズミと言えそうです。後ろ足には水かきがあり潜水は得意で、数分間も潜っていることがあります。また、水辺の生活に適応し、乳頭がわき腹の背中寄りにあることで浅瀬での授乳も可能です。門歯が長く、オレンジ色をしているのが特徴です。水辺に直径30㎝、長さ6mぐらいの穴を掘って一夫多妻の生活をしています。
 基本的には草食性ですが、貴重な水生植物を食害したり、あまり
 国内には天敵がいないことから今後の動向に注意が必要な動物です。中国では食用にされることもあるようです。
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▲ヌートリア(オレンジ色の門歯が見える)
▲水中でエサを取るヌートリア
▲2匹でじゃれあうヌートリア

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フクジュソウ(№572)

 スプリング・エフェメラルの花の代表としてフクジュソウがあります。
 キンポウゲ科の多年草で、落葉樹林の下で早春の2~3月に開花し続いて人参のような葉(羽状複葉)をひらきます。草丈10~25cm、陽が当たると直径3~4cmで艶のある黄色の花を開きますが、この花は蜜を出しません。花粉の媒介昆虫(ハエやアブ)を呼び寄せる手段として、艶のある花弁をパラボラアンテナのような角度で開き、花の中央部の温度を高くし、足湯を提供するような形で昆虫類を呼び寄せます。落葉樹が展葉し陽光を遮るようになる初夏には地上部が枯れ、翌春まで休眠します。
 石灰岩質の土壌を好み、江戸時代から多くの園芸品種が育成されてきました。最近自生種は4種類に分類されるようになりましたが、写真は奈良県で自生するフクジュソウです。根はごつごつしたゴボウのような根で、小鉢にいれて売られているものは太い根を切ってあるため弱ることが多いです。また促成栽培もおこなわれ、年末から正月に花を咲かせるように調整したものも見られます。
 別名、元日草、ついたち草とも呼ばれますがこれは旧暦の正月頃(2月)に開花するところから来ています。生薬として利用されますが、全草有毒で、蕾をフキノトウと間違って食べる事故が発生しています。
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▲フクジュソウ(蕾)
▲フクジュソウ

▲フクジュソウ
▲フクジュソウ

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カメノテ(№571)

 3月ともなると日の当たる海岸の岩場は意外と暖かく感じるものです。潮間帯(満潮時には海中に、干潮時には水の上に出る海岸)の岩場を歩くと岩の隙間に小さな亀の手のような貝のような生き物がびっしりついていることがあります。見た目が「亀の手の」ように見えることからカメノテと呼ばれる甲殻類ミョウガガイ科の生物でエビ、カニ、フジツボなどの仲間です。幼生が孵化するとプランクトンのような生活をし、他の個体が出す集合フェロモンで集まり、岩に固着すると一生その場を動きません。
 殻板(頭状部の堅い殻)は左右相称で4~5対ありますが、潮が満ちるとこれを開き、中から蔓脚(羽のような触手)を海中に出し、プランクトンなどの餌を摂って食べます。日本全国に分布し、通常3~4cmに成長します。
 非常に美味で、最近魚屋の店頭で見ることがあります。塩ゆでやみそ汁に入れますが、食用にするのは殻板の下の柄部(鎧のような皮に見えます)を外し、中身を食べます。高知や愛媛では昔から食用に供されていたようですが最近は通販でも目にすることがあります。スペイン、ポルトガルではペルセベスと呼ばれ高級食材になっています。
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▲岩の割れ目に定着するカメノテ
▲岩の割れ目に定着するカメノテ

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