ケヤブハギ(№564)

 本州、九州の各地林縁に咲いている雑草の一つです。山歩きの好きな人であれば、秋の山中を歩いた後、衣服にサングラスのような形のヒッツキムシが付いているのに気が付かれたこともあるでしょう。
 マメ科ヌスビトハギ属の多年草です。葉は地際に集中し、小葉は3枚に分かれ、頂小葉(3枚の小葉の内先端の葉)は9cmと大きく目立ちます。葉の幅は中心部より下(基部)が最も広く、葉の両面に細毛が多いのが特徴です。
 7~9月に60~100cmの茎が立ち上がり、ほとんど分枝せず1本が直立し、中央から上部には葉をつけません。茎の上部には白色で、先端が淡紅紫色の花弁を持つかかわいい蝶弁花を多数咲かせます。のちにくびれの大きい果実が2個ずつ付きサングラスのように見える果実となりますが、表面に多数あるカギで衣服にくっつくようになります。
 ヌスビトハギ(花茎にも葉が付く)、ヤブハギ(葉は殆ど無毛)などの仲間があります。
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▲ケヤブハギ(葉は地際に集中)
▲ケヤブハギの花
▲ケヤブハギの果実(サングラスのような形)

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ヤマトシジミ(№563)

 雪の便りも聞こえる11月下旬ともなると野山からチョウの姿も消えてしまいます。そのような中でも風のない穏やかな陽だまりを飛ぶシジミチョウの姿が見られました。ヤマトシジミです。
 早春4月上旬から晩秋の11月下旬まで本州以南の日本中、どこででも見られるチョウで、幼虫の食草がカタバミ類であることから、カタバミの生える都心部でもよく目につくチョウです。逆に、カタバミの見られない山中では少ないチョウです。
 前翅長(前翅の付け根から先端まで前縁に沿った長さ)が9~16mmの小型のチョウで、翅の表はオスでは青~青白色で発香鱗(匂いを分泌する鱗粉)を持ち、メスの表は暗褐色、裏はオス、メスとも灰褐色の地に円またはくの字模様の黒斑が見られます。
 食草のカタバミに産卵され、幼虫はカタバミを食べて育ちます。冬は幼虫態で越冬します。終令幼虫は蜜腺を持っており、蜜を出すためアリがよく舐めに集まっています。幼虫を捕食する天敵から身を守るために役立っているようです。蛹化は食草周辺の雨のかかりにくい所で行い、食草の上ではあまり見つかりません。
 2011年の福島原発事故後、周辺地域のヤマトシジミに放射能の影響と考えられる異常個体が認められたことの研究も知られています。
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▲ヤマトシジミ♀成虫
▲ヤマトシジミ♂成虫
▲ヤマトシジミ♂成虫

ウバユリ(№562)

 ユリの中でも、ユリらしくない葉を持った日本固有種のユリを紹介しましょう。それはウバユリで、日本の中部以西で見られユリ科ウバユリ属の多年生植物です。
 林の中や林縁で見られ、7~8月ごろ、50~100cmほどの茎をのばし、先に数個の花を横向きに付けます。花は10~15cmの筒状、緑白色の花弁でまさしくユリの花です。内部には淡褐色の斑紋が見られ、完全に開ききることはありません。内部の雄しべは6本で花糸の長さはそれぞれ異なり、昆虫がどの位置にいても花粉をつけやすくするような工夫がされているのでしょう。
 葉は他のユリ科植物と異なり長い葉柄を持ち、15~25㎝のハート型(卵状心形)で地際にかたまって数枚が見られます。学名の属名Cardiocurinamuはギリシャ語で「ハート型の葉のユリ」を意味します。英名でもheartleaf lilyと呼ばれ、その葉の形が特異であることを表しています。また葉には網状葉脈が見られ他のユリ科植物とは大きく異なります。この葉は花が咲くころには枯れてしまうことが多いため、「葉=歯」がない「姥ウバ」に例え「ウバユリ」と呼ばれるそうです。
 花後長さ4~5㎝の果実をつけ、中に扁平で軽く、広い翼を持った三角形の種子を約500個程度作り、乾燥によって3裂した果実から種子が風によって飛ばされます。
 ウバユリは1回繁殖型植物と呼ばれ、花をつけずに6~8年生育し、鱗茎(葉柄が肥大した球根)が十分成熟すると開花し、種子を作り(有性生殖)、子供の球根を残し(栄養生殖)て親株は枯死してしまいます。開花前の鱗茎は食用にされ、漢方として解熱、腹痛に有効だそうです。
 中部以北から北海道には変種で大型のオオウバユリが生育します。

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▲林縁に咲くウバユリ
▲ウバユリの花
▲おしべの花糸は長さが違う
▲果実
▲果実内の種子
▲種子

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