エノコログサ(№561)

 秋になると誰もが知っているエノコログサが目立つようになります。ネコジャラシとも呼ばれ、猫を遊ばせるのにも使われます。この仲間にも、よく似た種類がいくつかありますので紹介しましょう。
 エノコログサによく似ているが別種と分類されているものにアキノエノコログサがあります。アキノエノコログサは全体にやや大型でエノコログサの穂が垂直に立っているのに対し、アキノエノコログサでは穂先がやや下を向く傾向があります。葉の付け根の幅はアキノエノコログサが細く、果実はアキノエノコログサが確実に大きく穎(もみ殻)の付き方も異なることで区別できます。他に別種とされているものにキンエノコロがあり花(果)穂の柄から出る長い毛が金色に見える種類があります。出穂時期もキンエノコロはやや遅い傾向にあります。
 ほかにハマエノコロと呼ばれ海岸に生える矮性種や、穂の毛が紫色になるムラサキエノコロなどが知られていますがハマエノコロはエノコログサの変種(地理的隔離により生じた種)、ムラサキエノコロはエノコログサの品種(交雑し中間種が生ずる)として扱われています。
 エノコログサやヒエは穂に毛が見られますが、エノコログサの毛は小穂の柄から伸びた突起で、ヒエやコメなどの毛は果実の穎の先端が伸びたもので芒と呼ばれます。
 エノコログサは粟の原種と言われ、火であぶり毛を焼いてから醤油をつけて
食べることが可能です。
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▲エノコログサ(穂は立っていることが多い)
▲アキノエノコログサ(穂先は下を向く)
▲葉鞘基部 左:エノコログサ 右:アキノエノコログサ
▲花穂 左:エノコログサ 右:アキノエノコログサ
▲果実 左:エノコログサ 右:アキノエノコログサ
▲花穂の毛(アキノエノコログサ) 小穂の柄から伸びる突起(果実を取ると柄に残る)
▲花穂の毛(イヌビエ) 果実の穎の先端が伸びたもの(芒)
▲キンエノコロ(中央に1本エノコログサが混在)

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カラス(№560)

 日常的にみられる鳥といえば、カラス、スズメ、ハトでしょう。今回はスズメ目カラス科のカラスを見てみましょう。
 いつも街中や郊外で見られるカラスには2種類います。ハシボソガラスとハシブトガラスです。嘴(クチバシ)が細くおでこが飛び出していないのがハシボソガラスで、郊外の畑など地上部でエサを探すことが多く「ガワーガワー」と濁った声で騒ぐことが多いカラスです。ハシブトガラスは
嘴が太くおでこが飛び出しており都会の電柱や屋根の上などにとまり、ごみステーションなどをあさることが多く、「カーカーカー」と鳴くカラスです。
 いずれも全身真っ黒で、春から夏に高い木や電柱の上などに巣を作ります。子育ての間は非常に用心深く、人間にも攻撃的になることもあります。繁殖期以外は集団で過ごすことが多く、多数で集団ねぐらを作り、都会ではごみをあさる厄介者です。一方、鳥類の中では非常に頭がよく、人の男女を区別したり個人の顔を記憶することなどが知られています。さらに、堅い果実を車に轢かせて殻を割ることや水道の蛇口をひねって水を出したり、仲間同士では合図の言葉をしゃべることも知られています。雪の上でソリ滑りをしたり樹木の枝を折って遊ぶなど余裕のある生活の一面も見せてくれます。
 ところで、カラスの嘴の付け根を見ると、長い毛が密生していることがわかります。この毛の下には大きな鼻の孔が開いていますが、この毛はごみなどをあさる際、鼻を守る役目を果たしているのでしょうか。
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▲ハシボソガラス(口中の赤いのは幼鳥)
▲ハシボソガラス
▲ハシブトガラス
▲ハシブトガラス

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センニンソウ(№559)

 多くの花が終わった8~9月の林縁や草地にかたまって咲く白い花が目立つようになります。遠目には区別できませんがセンニンソウかボタンヅルです。どちらもキンポウゲ科センニンソウ属のつる性半低木です。
 遠くからは区別がむつかしいですが近づいてよく見るといくつかの違いが見られます。センニンソウは常緑性で葉縁は全縁(鋸歯が見られない)、ボタンヅルは落葉性で葉縁には不整鋸歯が見られる。また花はセンニンソウは純白で花糸はガク片(花弁はなく4枚の大きな花弁状に見えるのがガク片)より短く、ボタンヅルの花は淡黄色、花糸はガク片とほぼ同じ長さである点などで区別ができます。いずれも結実すると花柱(雌しべの柄の部分)が白色の毛でおおわれます。センニンソウではこの毛を仙人の鬚に例えてセンニンソウと呼ばれ、ボタンヅルではその葉がボタンの葉に似るツル植物の意味でボタンヅルと呼ぶそうです。
 いずれも有毒で牧場では嫌われ者となっていますが、中国では漢方薬として利用するそうです。属名 Clematis(クレマチス) から想像できるように園芸種クレマチスの原種で、センニンソウは園芸種クレマチスの台木にも使われます。センニンソウは常緑であることから庭木として利用されることもありますが、切断面から出る白汁は有毒ですので、手入れの際触れないように注意することが必要です。
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▲センニンソウ(常緑つる性半低木、葉縁は全縁)
▲センニンソウ花(白色、花糸はガク片より短い)
▲ボタンヅル(落葉つる性半低木、葉縁は不正鋸歯)
▲ボタンヅル花(淡黄白色、花糸はガク片と同長)
▲センニンソウ果実
▲ボタンヅル果実

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