イカリモンガ(№525)

 林間の半日陰や林縁部で日中活動し、人の目に触れることの多い蛾にイカリモンガがいます。前翅にオレンジ色のイカリ模様が見られるため付けられた名前です。
 前翅長は20mm、開長35mmぐらいでシジミチョウの仲間の大きさです。写真でもわかりますが、日中に吸蜜活動をします。止まるときは翅を重ねて立てた状態で止まります。触角は細く線状です。胴体の太さも他のシジミチョウなどと変わらず、多くの蛾ほど太くありません。模様も派手できれいです。日本全国に分布し4~5月と7~8月の年2回発生し、幼虫はシダのオシダ科イノデ属の葉を餌としています。冬は成虫のまま翌年まで越冬します。
 なぜこの昆虫が蛾なのでしょうか。日本ではチョウ目には約5000種の蛾類と約250種の蝶類がいます。チョウ目の中のセセリチョウ科、アゲハチョウ科、シロチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科の5科を蝶と呼び、他はすべて蛾と呼ばれているだけなのです。イカリモンガはチョウ目イカリモンガ科の昆虫です。
 近似種にベニイカリモンガと呼ばれる種がありイカリ模様が帯状で前
後翅が丸みを帯びた形をしています。関西以南に生息する南方系のガですが関西でも見られます。
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▲イカリモンガ成虫
▲ベニイカリモンガ成虫

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ホトトギス(№524)

 晩夏~秋になれば半日蔭の林縁、傾斜地にホトトギス類が花を付けます。ユリ科ホトトギス属の多年草で葉は互生し、草丈30~60㎝です。葉及び茎には毛が生えます。日本には13種、うち11種が日本固有種であるところから日本原産の植物と考えられています。
 関西にはセトウチホトトギス、ヤマジノホトトギス、奈良、和歌山の一部にキイジョウロウホトトギスが見られます。キイジョウロウホトトギスは岩場に多く茎は下垂し黄色い花を付けます。山道などでよく目にするのはセトウチホトトギスかヤマジノホトトギスです。茎は直立し、花の花糸、花柱に紫色の斑点があり、花被基部が黄色を帯びるのがセトウチホトトギスで、花糸、花柱に斑点がなく花被基部が黄色を帯びないのがヤマジノホトトギスです。ヤマジノホトトギスの方が高地にみられるようです。
 最近園芸種が多く出回っています。野生種でも写真のように非常に赤いものから白いものまで見られますし、タイワンホトトギスとの交雑種などもホトトギスの名前で販売されているようです。
 さて、ホトトギスの名前は鳥の一種であるホトトギスの胸の模様が花の花被片にみられる紫色の斑点に似るためと言われていますが、鳥の方は黒い横縞模様、花は紫色の斑点です。似てないと思いますが。
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▲セトウチホトトギス
▲セトウチホトトギス(花糸、花柱に紫斑、花被基部は黄色)
▲セトウチホトトギス(紅色の濃い花)
▲セトウチホトトギス(白色の濃い花)
▲ヤマジノホトトギス(花糸、花柱に紫斑なし)

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シリアゲムシ(№523)

 昆虫の中に生きている化石と呼ばれる仲間がいます。古世代最後の時代であり、完全変態の昆虫が発生し始めた時代でもあるペルム紀の化石が見つかっているシリアゲムシの仲間です。
 シリアゲムシはシリアゲムシ目シリアゲムシ科の昆虫の総称で世界には約600種、日本国内に20~30種と言われる小さなグループです。このグループにはシリアゲムシと寒地に生息するガガンボモドキが含まれます。シリアゲムシは弱々しい翅をもち、オスは鋏を持った腹端を上に反り返らせ、サソリを連想させる姿をしています。そのため英名ではscorpionfly(サソリムシ)と呼ばれます。
 昆虫分類の系統樹ではチョウ目の先祖に当たり、幼虫は肉食のイモムシで完全変態をします。成虫は花粉や他の昆虫の死体などを食べているようです。オスは交尾の際、メスにエサをプレゼントすることが知られていますが、人間生活に益もなく害もないため、詳しくは調べられていません。関西では写真のヤマトシリアゲムシが多く見られます。これは年に2回(4~5月と7~8月)発生し、春型は全体が黒色、夏型は写真のようにべっ甲色をしておりベッコウシリアゲムシとも呼ばれています。
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▲ヤマトシリアゲムシ(ベッコウシリアゲムシ)オス成虫
▲ヤマトシリアゲムシ(ベッコウシリアゲムシ)オス成虫

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