キジ(№474)

 5月連休の頃、水田に接する林縁で「ケーン、ケン」と鳴き、翼を広げて激しく「ドドドド」と音を立ててホロウチ(母衣打ち)をするキジを見かけました。
 キジは、昔話の「桃太郎」にも登場する日本在来種で、日本の国鳥にも指定されています。本州から九州まで、各地の開けた場所(平地、林縁、草地、農耕地など)に住みますが、春の繁殖期以外にはあまり人目に触れることが少ないようです。「雉も鳴かずば撃たれまい」との諺はそのような様子を表しているのでしょう。
 昼間は地上生活をしており、植物や昆虫などを餌とし、夜間は木の枝の上で寝るようです。オスは体長81cm、全体が美しい緑色を基準に目の周囲に赤い肉垂があり、背、翼、尾羽は茶褐色で非常に目立つ色をしています。メスは体長約58cm、全体茶褐色の目立たない色をしています。ニワトリ程度の大型の鳥で日本にはもともと4亜種がいたそうですが、狩猟鳥であるため飼育繁殖させては放鳥されてきたため、今では4亜種に区別するのがむつかしくなってきているようです。北海道には朝鮮半島産のコウライキジが放鳥されているそうです。
 地震の初期微動を感知できるらしく「朝キジが鳴けば雨、地震が近づけば大声で鳴く」ともいわれています。また、メスは母性愛が強く、地上に作った巣に外敵が近づくと、偽傷(怪我をしているように見せかけ敵を自身に引き寄せる)などによって巣やひなを守ることも知られています。
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▲キジのオス
▲ホロウチをするキジ

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マイマイガ(№472)

 緑の美しい季節です。この緑を食い荒らし、ボロボロにしてしまうケムシたちの季節でもあります。ケムシの殆どはチョウ目幼虫で多くの種類が植物を食べています。食べる植物の種類が1種類のものを単食性、数種類のものを狭食性(少食性)、多数の種類にわたるものを多食性と分けるようですが、多食性の代表のようなケムシにマイマイガの幼虫がいます。
 マイマイガはドクガ科マイマイガ属の蛾で成虫は性的2型(メス、オスで形、色、模様、大きさなどが異なる)を持ちオスは20~50mmで茶褐色、メスは50~80mmで白色の蛾です。年1回の発生で、6月中旬~7月に羽化し、卵塊として生まれた卵で越冬し、晩春に孵化します。1令幼虫は毒針毛を持ちますがそれ以降は無毒です。よく糸を吐いてぶら下がり、風に乗って移動するためブランコケムシとも呼ばれます。頭部は長円形で縦長の黒斑が目玉のように見えます。背面には2列の瘤があり、前方5対は青、後方6対は赤となることが多いようです。植物なら何でも食べるといっても過言ではないほどで森林害虫として恐れられています。
 卵はあらゆる場所に産卵され、植物はもちろん建物の壁、車、船などにも産まれ、車や船とともに広く拡散するようでコスモポリタン種となっています。10年に1度大発生するといわれますが、100年に10回程度大発生してきたというのが正確なようです。関西では1971年京都、滋賀、和歌山、1993年大阪府能勢、2013年大阪府生駒市、2014年滋賀県で大発生が記録されています。
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▲マイマイガ中令幼虫
▲食害中の幼虫
▲建物の壁に産まれた卵塊

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ヤマネコノメソウ(№473)

 植物が大きく移動できるのは花粉の世代と種子の世代でしょう。種子の散布を助けるのは風や動物が多いのですが、今回は雨滴で種子を弾き飛ばす植物の一つとして、ヤマネコノメソウをを紹介しましょう。
 ヤマネコノメソウは北海道から九州まで、日本全国のやや湿った畔、林縁、などに普通に生えているユキノシタ科ネコノメソウ属の植物です。草丈は根出葉で2~7cm、花茎が5~20cmと小型で、花は早春3月頃に花弁のない緑黄色4枚のガク片と4~8個の黄色いオシベなどからなる地味で小さな(4mm)花を咲かせます。果実は長楕円形で長辺に沿って杯状に半開し、中に黒褐色の種子が多数見えます。この様子が縦長の猫の目状に見えることからヤマネコノメソウと名付けられたようです。杯状に開いた果実は上を向き、底に種子がありますが、この種子は紐のようなもので果皮につながっており風でこぼれることはないようです。雨が降ると勢いよく落ちてくる雨滴がこの杯の中に落ち、種子を弾き飛ばす仕組みになっています。ヤマネコノメソウは種子以外に茎の根元にできる珠芽(ムカゴ)による栄養繁殖もします。
 ネコノメソウ属には近縁のネコノメソウなどもありますが、ヤマネコノメソウの葉は互生ですがネコノメソウは対生につきます。。
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▲ヤマネコノメソウ
▲ヤマネコノメソウの杯状に開いた果実と種子

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