ガロアムシ(№465)

 正月明けの谷道でイノシシが土を掘り返した跡に出会いました。斜面の上からの落石や、落ち葉が溜まった少し平坦になったところです。イノシシがミミズや、越冬中の昆虫などを捜したのでしょう。冬季には石の下などで越冬する昆虫が見られます。何気なく石を動かしたところ、体長2.5㎝程度の黄褐色の昆虫がじっとしていました。ハネカクシ?ハサミムシかな?とよく見ると、大きい、色が黒くない、ハサミもない、おまけに昆虫の特徴である翅がない。しかし6本足、体は頭部、胸部、腹部に分かれておりやはり昆虫?気温が低いためか時々触角を僅かに動かすだけでじっとしているため、とりあえず写真に収めました。ファインダーを通して覗きながらひょっとしてガロアムシでは?採集しようとすると素早く逃げ、石の隙間に潜り込んでしまいます。体は柔らかく、採集に気を使いました。尾端に産卵管が見られることからメス成虫でしょう。
 ガロアムシは氷河時代の遺存種として注目されている昆虫ですが、冷涼で湿っぽい土中、石の下、洞窟などに生存しており、なかなか人目に触れることが無い希少種として知られています。かつては翅を持っていたと考えられており(翅を持った先祖の化石が見つかっている、解剖すると翅を動かす筋肉が見られる等)何故翅をなくしたのか分かりませんが、翅を持たないため限られた場所にしか分布しないようです。また、土中生活のため複眼は退化しています。肉食のようで、大きな顎を持っています。幼虫は体色が白いだけで形は成虫とほとんど変わらない不完全変態です。幼虫は5~7年で成虫になり、成虫寿命は1~2年と言われており昆虫の中では長寿と言えるでしょう。日本には5,6種類存在するようですが標本が少なく分類も進んでいないのが実情です。最近のDNA解析などで、バッタ、カマキリ、ゴキブリなどと共通の祖先をもつらしいことが解ってきました。
 ガロアムシの名前は1914年、フランスの外交官E.Galloisが中禅寺湖で発見したことから名づけられたものです。
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▲ガロアムシメス成虫
▲ガロアムシメス成虫

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イヌホオズキ(№464)

 日本中、北から南までどこででも見られるナス科ナス属の雑草にイヌホオズキがあります。1年草ですので、冬の寒さに合うと枯れてしまいますが、暖冬の今年は2月になってもあちらこちらで見ることができます。
 草丈30~90㎝、茎は直立、分枝し葉は長さ3~10cmでナスの葉に似ています。茎の途中から花芽を出し、6~12月に4~8花を散房状(一点から複数の蕾が周囲に広がる)に付けます。白い花弁の中央から黄色の葯を出し、未熟果は緑色、熟すと黒色となり中に15~60の種子ができます。史前帰化植物(有史以前に帰化した植物)と言われています。
 全草にソラニン(ジャガイモの発芽時に生ずる有毒成分)を含む有毒植物ですが、漢方では解熱剤、利尿剤、抗がん剤として利用されるそうです。油断していると畑に大発生をしていることもあり除草に注意が必要ですし、ナスの大害虫であるニジュウヤホシテントウムシが好んで食害するためナスの栽培地では特に注意が必要です。
 類似種にオオイヌホオズキ、アメリカイヌホオズキ、テリミノイヌホオズキなどがありますが、非常によく似ており同定はむつかしいようです。
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▲イヌホオズキ
▲イヌホオズキの花
▲未熟果
▲熟果

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ハクセキレイ(№463)

 身近な鳥の一つとして、ハクセキレイがいます。
 スズメ目、セキレイ科の小鳥で、河原、草地、田畑、舗装された道路上など河川の近くの平坦な場所であればどこにでも顔を出すと言って間違いないでしょう。体長21cm程度、全体白色で頭、背、胸に黒色の班があります。白い顔には黒い過眼線(目を通る線)が見られます。あまり人を恐れることはなく、民家の隙間や石垣などにも巣をつくることがあり、比較的間近で観察することができます。雑食性で平坦な地面に降り、小さな昆虫や植物の種子などをついばんでいます。地上では長い尾を上下に振り、左右の足を交互に出してトコトコ歩きますが両足をそろえてぴょんぴょんと跳ぶことはありません。また、飛ぶときは波を描くような飛び方をし、チッチッチッと鳴きながら飛びます。北海道、関東以北の水辺を中心に住んでいましたが、都市部にも適応できることから生息地を広げ、最近は四国、九州までも南下しています。留鳥または漂鳥(国内で季節により山地、平地間を移動する鳥)とされています。冬季は単独で行動しますが、夏季には番で縄張りを移動することが多くなります。
 国内には亜種と考えられているものが4種と近縁種にセグロセキレイがいます。ハクセキレイ、セグロセキレイどちらも背は黒いのですが頬(目の下)が白いのがハクセキレイ、黒いのがセグロセキレイでセグロセキレイの方が河川依存性が高く、街中で見られることは少ないです。
 この両者よりも水辺を好むセキレイの仲間にキセキレイがいます。キセキレイは腰から下面が黄色で脚が黄褐色をしており、全体にやや細身ですので比較的区別しやすいです。ハクセキレイ、セグロセキレイに比べ、人間に対する警戒心はやや強いようです。

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▲ハクセキレイ
▲セグロセキレイ
▲ハクセキレイ?(幼鳥でしょうか)
▲キセキレイ

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