スミレモ(№429)

 砂防ダム堰堤や水滴が滴る岩肌が時々オレンジ色に見えることがあります。オレンジ色のコケ?いえいえ、これは藻類の一種でスミレモと呼ばれています。
 藻類といえば海産のコンブ、ワカメ、テングサ等の海草を想像しますがアオコの原因になるのも藻類で光合成をする生物でコケ、シダ、種子植物に入らないものの総称です。中でもスミレモは海産でも、淡水産でもない気生藻類と呼ばれる仲間で陸上で生息する藻類の1種とされています。このスミレモも複数種が存在するようです。
 オレンジ色に見えるのはカロチノイドの1種、ヘマトクロムという色素を含むためでこの色素で水中より強い紫外線から体を守っているのでしょう。水中生活から陸上生活へのカギを握っている生き物かもしれませんね。
 スミレモという和名の謂れは?と疑問に思い、調べてみたところ「スミレのにおいがする」とありました。しかしいくら匂ってみても湿っぽい土のにおいだけでした。培養すればスミレのにおいがするとの情報もありますが・・・。ちなみに英名は rock violet algae で「岩上のスミレ藻」といったところでしょうか。
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▲砂防ダムに生えるスミレモ
▲古木に生えるスミレモ
▲枝先にも生えるスミレモ
▲近づくとフサフサした藻に見えますね

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ネグロマグソコガネ(№428)

 関西の観光地の中でも奈良公園は観光資源としての神鹿が有名です。現在1360頭が生息しているそうです。このシカたちは毎日合計約1トンの糞をします。この大量の糞の始末は糞虫と呼ばれるコガネムシの仲間が餌として利用し片付けてくれています。―芝生―(餌として)―シカ―糞―(餌として)―糞虫の働き―(肥料として)―芝生―という、見事なサイクルが繰り返されているのですね。
 しかし、冬の寒い時期に糞虫は活動しているのでしょうか?2月に奈良公園で鹿の糞をひっくり返してみました。そこには2mmに満たない小さな褐色の甲虫が、糞の中に潜り込んでいました。ネグロマグソコガネといい、冬季間奈良でよく見られるマグソコガネの仲間でした。
 1時間ばかり探しましたが、小さなコガネムシが数匹見つかっただけでした。コガネムシは春と秋に多数発生するようで、特に春秋には体長1、5cm以上のオオセンチコガネが多数発生し冬に食べ残されたシカ糞も殆ど食べ尽くされるのでしょうか。既出のオオセンチコガネは赤銅色ですが奈良のオオセンチコガネは瑠璃色をしており非常にきれいでルリセンチコガネとも呼ばれます。春に奈良を訪ねれば低空飛行で糞を探すルリセンチコガネを見ることができます。
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▲鹿糞の裏、中央穴の中に潜っています
▲ネグロマグソコガネ成虫

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スズメノカタビラ(№427)

 日本芝は、冬の期間地上部が枯れ一面褐色となります。2月になると枯れた芝生の間から緑色の芝のように見えるイネ科の草が目立つようになります。これは芝生の冬の雑草として最も嫌われるスズメノカタビラであることが多いです。
 スズメノカタビラは、越年生1年草で、秋に発芽し、冬の間生育を続け春から初夏に開花結実した植物体はやがて枯れ、種子で夏の間休眠する生活環を持っていました。しかし最近はこれが多年草化し、
匍匐茎を出し、その節から根を出した若い個体が夏にも開花、結実しながら横に広がり、年中開花し休眠しない固体群が見られるようになりました。
 スズメノカタビラが芝地で問題になる要因として、花をつけ易く草丈5cm程度でも開花しますし、耐陰性、耐湿性、耐寒性が芝生以上に優れ、芝生の生育に不適な日陰、過湿地等では特に問題になります。田植え前の水田では一面に生えそろったスズメノカタビラを見ることもあります。
 スズメノカタビラの名前の由来はよく分かりませんが、花をスズメガ着る帷子(カタビラ、一重の着物)に似ているとしたのでしょうか。
 防除には土壌を酸性化させないこと、排水を良くすること、チッソ過多にしないことなどの耕種的方法がありますが除草剤の使用も必要です。芝地でのサッチの除去(節を含む切断茎から発根することがある)も役に立つようです。
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▲冬季芝生の中で目立つスズメノカタビラ
▲スズメノカタビラの大株
▲水田一面に広がったスズメノカタビラ
▲栄養繁殖(矢印)しているスズメノカタビラ
▲スズメノカタビラの花

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