タケノコ(№402)

 初夏を表す季語にタケノコがあります。竹になる前の子供で若芽のことを指します。新芽が成長し、竹の皮が自然に落ちるのが竹、いつまでもくっついているのは笹ですが、タケノコという場合はタケの仲間のモウソウチク、マダケ、ハチクの他に笹であるチシマザサ(ネマガリタケ)の若芽もタケノコと呼ばれます。タケノコは煮物などに使われるほか、乳酸醗酵させたメンマが食材として有名です。
 さてタケノコの外側についている皮はタケの皮と呼ばれますが、これは植物のどの部分に当たるのでしょうか。これは葉の基部が茎を巻くように付いており葉鞘と呼ばれるものでイネ科などの単子葉植物によく見られます。ネギの葉の白い部分やタマネギの玉にあたる部分も葉鞘です。では葉柄や葉身はどうなっているのでしょうか。葉柄は退化し、葉身はタケの皮の先端に付いた突起状のものがそれです。タケの皮は中心の本体を保護するだけではなく、若いタケノコの皮を剥ぐとその後の成長が止まることから本体の成長を助ける働きもあるようです。タケの皮はおむすびの包装や中に梅干を包み込んで子供のおやつとして盛んに使われましたが、今では郷土食としてのチマキやアクマキに使われる程度になりました。
 タケノコはあくが強いといわれますが、タケノコに多く含まれるチロシンが酵素の働きでホモゲンチジンに変わりあくとなるためで、この変化が早いため掘ってから時間が経つとあくが強くなります。これを防ぐには掘り取った後、出来るだけ早くゆがき酵素の働きを止めることでおいしく頂くことが出来ます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲タケノコ
▲脱げ落ちたタケの皮
▲タケの皮で巻いた粽(ちまき)

homeへ

ジムグリ(№401)

 3月末まだ冬の名残が感じられる時期ですが、気温20℃と異常に暑い日の朝、長さ40cm程度でこれまで見たことの無い赤いヘビが林道を横切りました。本州にはアオダイショウ、ニホンマムシ、シマヘビ、ヤマカガシ、ヒバカリ、ジムグリ、シロマダラ、タカチホヘビの8種類のヘビが知られていますが、この赤いヘビはジムグリの幼体とわかりました。
 ジムグリはトカゲ目ナミヘビ科に分類される日本の固有種で無毒の蛇です。小さいうちは赤褐色に黒い斑点をつけ、頭と胴のくびれがはっきりしないかわいい蛇です。頭部の黒点がV字型になるのが特徴だそうです。大きくなると黒い斑点はなくなるようです。腹のうろこは黒と淡褐色の市松模様になるため「元禄ヘビ」とも呼ばれます。
 比較的低温を好み、季節的には春秋、時間的には朝夕に行動することが多いようです。通常石の下や、土中の穴に潜むことから「地潜り」からジムグリと呼ばれるようになったようで、ネズミやモグラ等を餌としているようです。なかなか地上に出ることが無く、人目に触れない種類のようです。
 (*画像をクリックすると拡大されます)
◀ジムグリ

homeへ

アカメガシワ(№400)

 木々が新葉を開く頃、赤い新葉を開き一際目立つ木があります。アカメガシワといって、空き地や、道路の舗装の隙間、石垣など手入れの行き届かない場所をはじめ新規開発された場所などに生えるためパイオニア植物の代表とされています。新芽が赤く、皿の代用として使える大きな葉をつけた植物の呼び名であるカシワを付けてアカメガシワと呼ばれたようです。
 樹高15mくらいになる落葉高木で本州以南から東南アジアに分布する亜熱帯~暖帯性植物です。雌雄異株で7月頃開花し初秋に実を結びますが、種子は山火事や道路・石垣のコンクリートの隙間などで高温に晒されると発芽が促進されます。そのため山火事直後や開発直後の土地に最初に生育するためパイオニア植物と呼ばれます。葉は互生しますが展葉期に新芽の先端から見下ろすと、下の葉ほど大きく広がり上の葉の陰に入らないように生育しているのがよくわかります。同時に新しい葉は赤いのですが、大きくなるにしたがって徐々に緑に変わっていくのが見られます。これは葉についている星状毛が赤いためで、展葉初期の葉はこの赤い毛に覆われているため葉が赤く見えますが、展葉が進み毛の密度が下がるとともに星状毛が脱落することで地色の緑に変わっていくようです。試しに赤い葉をこすってみると、地色の緑が出てきます。
 この木の葉にはアリがよくみられます。これは葉の表面基部に1対の花外蜜腺があり、ここから出てくる蜜を舐めにアリが集まるからです。アリを集めることでケムシなどの害虫の食害から葉を守ることが出来るといわれています。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲アカメガシワの高木
▲新葉の開き方(下ほど大きい)
▲赤い星状毛で赤く見える新葉
▲赤い毛を削ってみた
▲葉の基部の花外蜜腺(2個あり、アリが吸蜜中)

homeへ

 


ページトップへ