トチノキ(№360)

 最近の森林は殆ど針葉樹に入れ替わり、なかなか広葉樹の山にはお目にかかれませんが、谷筋で車の通れない山に入るとトチノキに出会うことがあります。トチノキは落葉広葉樹で、冬期間は葉がありませんが、冬芽を見るとトチノキであることがすぐわかります。ただ、トチノキは大木になり高さ35m、直径4m以上にもなることがあり、冬芽は枝先につくため簡単に見られないかもしれません。トチノキの冬芽は非常に大きく、数㎝になることもありこれだけでも目立ちますが、冬の寒さ対策として粘液で覆われているのが特徴です(写真左)。この粘液は太陽光の吸収で冬の寒さから芽を守るだけでなく、鳥や虫からも守っているようです。また、春になると新葉がでますが、葉も大きく、15~35cmの小葉が5~7枚1箇所から広げた指のように出る掌状複葉です。初夏には、15~25cmの穂状の集合花を直立させます。この花も上部の枝の先端で咲くためなかなか気が付かないことが多く目に触れることが少ないと思います。写真右にはトチノキの花も載せました。ミツバチの良好な蜜源です。花は雄花と両性花をつけますが両性花は少なく、果実も多くありません。しかし大きくかたい果実であり、街路樹などでは落下時に危険な状態となるため注意が必要です。
 トチノキは大木になり白木で材も固く、1枚板のテーブルや、他の家具などに重宝され、どんどん伐採されるため、へんぴな山奥にしか残っていないようになりつつあります。トチの実は、かつてはそのでんぷんを取り出し食用にされていましたが、有毒成分であるサポニンを含むため前処理に大変労力を必要とし現在ではトチモチ等のみやげ物として利用されるに留まっています。
 国道365号線、滋賀県と福井県の県境に栃木峠という峠があり、この峠にトチの大木があります。気象予報で、嶺北、嶺南と呼ばれるのはこの峠を境に北と南に分けて呼んでいるそうです。近縁種のセイヨウトチノキはマロニエと呼ばれます。
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▲トチノキの冬芽
▲トチノキの花

ウラナミシジミ(№359)

 春になると白や紫色のきれいなエンドウの花が咲き始めます。暖地ではその花の周りに時々きまったシジミチョウがみられることがあります。これがウラナミシジミです。ウラナミシジミは豆科植物の花が大好きです。なぜならウラナミシジミの卵は豆科植物の蕾や花に産まれ、幼虫は、その蕾や花を食べて育つからです。豆の蕾や花を食べるため、農家にとっては豆の害虫として防除の対象になっています。
 このチョウは暖地性のチョウで関西では越冬出来ず、晩秋には関西以北の成虫は全て死に絶え、早春南の越冬地(四国、九州など)から成虫が少しずつ北上、繁殖し増殖していきます。日本では北海道南部にまで到達するようです。紀伊半島南部ではハウス栽培や、暖地でのエンドウなど、冬期間も豆科作物が栽培されており、これらの地域では越冬も可能かもしれません。
 シジミチョウの仲間の一部には、本種も含め後翅の末端にしっぽ(尾状突起)を持つものがあります。この場合、尾状突起の基部には目玉模様があるのが普通で、まるでチョウの顔(触覚と目玉)が後部にもあるように見え、鳥が後方から攻撃する際、翅の後端部分を頭と思って攻撃し翅が破れてチョウは逃げることが出来ると言われています。下の写真で、右のほうに頭があるように見えますか?
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◀ウラナミシジミ

ネコヤナギ(№358)

 水際に多いヤナギ科ヤナギ属の低木で高さ2~3mになります。冬芽は鱗芽(防寒用の芽鱗で覆われている)ですが、ネコヤナギは通常1枚の芽鱗しかありません。3月頃この芽鱗が取れ中から銀白色の毛をつけた芽が顔を出します。 雌雄異株で、雌花と雄花は別の株に咲きます。花は穂状に咲きますが、雄花の穂が若干長く雄花3~5cm、雌花2,5~4cmです。個々の花には花弁もガクもありません。雄花は雄しべ2本ですが、花糸2本は合着して一つになっています。また開花前には赤みがかり、花粉を出すころは黄色く、その後黒く枯れます。一つの穂についてみると下の花から上の花へ順に咲くようです。雌花には1本の花柱がありますが、受粉時には先端は二つに分かれています。1穂の中の開花順序は雄花では比較的はっきりしているようですが、雌花では必ずしも一定とは言い切れないようで、陽の当たる面が早いのは間違いないように見受けられます。
 樹液には、カブトムシやクワガタムシがよく集まり、子供たちがよく訪れますが、最近は川の護岸がコンクリートで固められネコヤナギそのものがあまり見られなくなっているのは残念です。
 ところでネコヤナギは別名エノコロヤナギとも呼ばれます。エノコロとは子犬のことです。一方エノコログサはネコジャラシとも言われますがネコと子犬は対なんでしょうか。
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▲ネコヤナギの雌花
▲ネコヤナギの雄花
▲川沿いに育つネコヤナギ

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