ルリタテハ(№348)

 秋になると、鉢栽培のユリやホトトギスにケムシの被害が目立つことがあります。葉の裏に、トゲトゲで黄色地に黒斑をつけたケムシが見つかればルリタテハの幼虫かもしれません。
 ルリタテハはチョウ目、タテハチョウ科、ルリタテハ属のチョウです。成虫の翅は表面が青みがかった黒褐色で中央に鮮やかな水色の帯模様が見られます。この模様はカタカナの「ノ」の字に見えることから学名の亜種名「no-japonicum」の最初の「no」が日本語の「ノ」を意味しています。翅の裏は、表とはまったく異なり灰褐色の細かい模様をつけています。この模様はタテハチョウ科の多くに共通していて、この仲間が止まるときは翅を合わせて閉じるため翅の裏が見えることになり、止まった樹皮の模様とそっくりで完璧な擬態となります。
 年に2,3回発生を繰り返しますが、秋に発生した成虫はそのまま冬を越し、春先一番にキチョウやキタテハとともに飛び始めます。成虫は花の蜜より樹液や獣糞を好みます。また、オスは縄張りを持ち他のオスや時にはすずめさえも追い掛け回すことが見られます。
 幼虫は68本の棘状突起を持っています。当然幼虫は脱皮しますが、この棘1本1本もきれいに脱ぎ捨て新しい棘を持った幼虫に変わります。この棘は見るからに痛そうに見えますが刺す事はありません。
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▲ルリタテハ幼虫
▲幼虫の脱皮殻(トゲまで脱皮)
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▲蛹(垂蛹=尾端を枝に固定しぶら下がった蛹)、写真では脱皮殻がぶら下がっています
▲ルリタテハ成虫

ツルニンジン(№347)

 晩秋の山道を歩いているとつる性植物で、釣鐘のような白い花(内側には紫の斑紋がある)を下向きに咲かせている植物が見られることがあります。これはツルニンジンと呼ばれる、キキョウ科のつる性植物です。
 ツルニンジンは、ツル性のニンジンの意味ですが、ニンジンというのはコウライニンジン(高麗人参)のことで、根がよく似ているためにニンジンと呼ばれています。この根は形だけでなく、効能も本場ものと同様に高いようで、実際市場に出ているツルニンジンの根の価格は非常に高価なものとなっています。ツルニンジンの新芽はトトキと呼ばれ、代表的な山菜の一つです。地域によってはジイソブと呼びますが、これはもう少し小型のバアソブに対して付けられたもので、「ジイ」は「爺」を、「ソブ」は「ソバカス」を意味するそうです。ソバカスというのは花の内側の赤紫色の斑点を指して呼んでいるようです。
 果実も下向きで、熟すと先端部(下端)が開き、風に乗って翼の付いた種子が飛ばされます。
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ツルニンジン花
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▲ツルニンジンの花(内側に赤紫色斑点)
▲ツルニンジンの果実
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▲ツルニンジンの種子(翼付きの種子)

ハンミョウ(№346)

 最近は農道まで舗装されることが多く、畑への道も快適になってきました。その反面、地道を生活の場としてきた昆虫にとっては生活の場を奪われることになってしまいます。その代表的な昆虫がハンミョウ(ナミハンミョウ)です。
 ハンミョウはコウチュウ目ハンミョウ科の昆虫で、かつては日当たりの良い林道や川原近くの小道にたくさん生息していました。成虫は大変きれいな昆虫で、金属光沢のある緑地に赤い横帯と白斑を持ち体長2cm程度です。長い脚には白い脛毛が見られます。地面を歩き回り他の徘徊昆虫を捕らえて餌としています。人が近づくと1~2m先へ飛んで逃げこちらが近づくと、また先へ逃げることを繰り返します。この様子から「道教え」とか「道しるべ」と呼ばれ親しまれてきました。敏捷に水平移動しますが垂直方向に飛び上がるのは苦手なようで高く飛び上がるのを見たことがありません。幼虫も、地面に縦長の穴を掘りその中に潜んで、近くを通る他の昆虫などを捕まえて餌にしています。そのため、土の道と切り離せない昆虫ですが最近は地道の舗装で棲家を奪われたようでなかなかお目にかかれなくなりました。
 ハンミョウと名前のよく似た仲間にツチハンミョウ科の昆虫がいますが、その生活は
ハンミョウとはまったく異なった別種です。ツチハンミョウの仲間はカンタリジンという毒物質を持っており有毒ですがハンミョウはまったく無毒です。しかし、肉食昆虫のため大きな顎を持っており、素手で捕まえると強く咬まれることもあり注意が必要です。
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◀ハンミョウ(ナミハンミョウ)

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