クリ(№342)

 秋の味覚はマツタケ、クリに代表されるでしょう。ところでこのクリのイガはいったい何のためにあるのでしょうか。クリの果実は動物たちの格好の餌でもあります。そこでクリは、動物による食害から果実を守るために渋皮やイガを用意したのでしょう。しかし、自然界にはそのバリアーを乗り越え果実に産卵するクリシギゾウムシがいます。クリの果実の90%以上がこの虫に産卵されています。イガの隙間から産卵するクリシギゾウムシの努力に感心します。
 ところでこのイガはクリ独特のもののように見えますが、実はこのイガと同じ起源を持つものはブナ科の果実(ドングリ)に見られる殻斗(ボウシ)がそれです。殻斗が果実全体を覆っているブナ、クリ、スダジイ等、帽子状であるが大きく柔らかな突起が多数見られるクヌギ、アベマキ等、帽子状の殻斗に横縞模様が着いたシラカシ、アラカシ、アカガシ、ウラジロガシ等、帽子に小さな突起状の点が多数見られるものシリブカガシ、ウバメガシ等などいろいろな殻斗が見られますが全て発生起源は同じで総苞片が癒合変化したものです。
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▲クリ
▲クリの殻斗(イガ)
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▲クヌギの殻斗(大きな突起が多数見られる)
▲ナラガシワの殻斗(小さな突起が多数見られる)
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▲アラカシの殻斗(横縞がみえる)

フナムシ(№341)

 久しぶりに海岸へ出てみました。防波堤の上を4,5cmの黒っぽいムシが急ぎ足で走り抜けました。どこの海岸にもいるフナムシですが非常に敏捷でなかなか写真に撮れません。熱帯から温帯の岩礁地帯に群生する甲殻鋼等脚目フナムシ科の動物です。歩脚は7対で仲間のダンゴムシと同じです。長く2つに枝分かれした尾脚を1対持っています。
 雑食性で海草や動物の死体などを餌とし海岸の掃除人とも呼ばれています。海岸の近くでないと生息できないようですが水には弱く、水中に長時間いると溺死してしまいます。カニ、鳥、魚などが天敵で、アジ、カサゴ、グレ、チヌ、マダイ、カワハギなどのつり餌として利用するところもあります。
 英名は wharf roach(海岸のゴキブリ) といいますが長崎ではフナムシもゴキブリも同じ「アマメ」と呼ぶそうで英名と共通しています。もちろんフナムシは甲殻類、ゴキブリは昆虫類でまったく別の生き物です。甲殻類ですからエビ同様おいしそうに思いますが強い苦味と腐敗臭が強いそうで食用には向かないようです。

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▲群生しているフナムシ
▲フナムシ

ミソハギ(№340)

 ミソハギは盆花としてよく知られています。用水路脇、水田畦際、農耕地周辺の湿地に多く8月に開花することからショウリョウバナとも呼ばれます。溝に生えるハギのような花あるいは禊(みそぎ)に使った花の意味でミソハギと呼ばれるようです。
 開花中のミソハギの花を正面から見ると、雌しべが花弁より長くその周囲に雄しべが見える花、雄しべのみが見え中のほうに雌しべが見える花、覗き込むとかろうじて雄しべだけが見える花の3種類があることに気がつきます。ミソハギの雄しべは12本あり、その内6本は長く、6本が短いのが普通です。雌しべの柱頭は長い雄しべより長く飛び出したもの(長花柱花)、長い雄しべと短い雄しべの中間の長さのもの(中花柱花)、短い雄しべより更に短いもの(短花柱花)の3種が見られます。このように花によって雌しべ、雄しべの長さ関係が異なる花を異花柱性(異形花柱性、異形蕊性)と呼びます。代表的なものとして、2つのタイプのある2形花柱性(サクラソウ、ナス等)、と3形花柱性(ミソハギ、アサザ等)があります。このような花を咲かせる植物は基本的には自家不和合性でお互いに別タイプの花同士で受粉しやすい性格を持っています。これも自家受粉を防ぎ出来るだけ良質の子孫を残すための工夫といえるでしょう。
 茎の断面は四角で葉は十字対生です。花のタイプは株ごとに一定のようです。全草を乾燥し漢方薬の千屈菜として下痢止めなどに使われるそうです。
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▲長花柱花
▲上から  雌しべー長い雄しべー短い雄しべ
▲中花柱花
▲上から  長い雄しべー雌しべー短い雄しべ
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▲短花柱花
▲上から  長い雄しべー短い雄しべー雌しべ
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▲ミソハギ

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