タラヨウ(№339)

 タラヨウはモチノキ科モチノキ属で国内では関東以西の各地に分布し、10~20mになる常緑広葉樹です。雌雄異株で4~5月に開花し、雌株は秋に真っ赤な果実をつけます。長楕円形の葉は長さ15~20cmで肉厚です。この葉の裏に先の鋭利な爪楊枝のようなもので字を書くと、数分後には字が黒く浮き上がって見えます。そのため葉書の木ともいわれます。昔インドで経文を書くのに使われた葉を貝葉(バイヨウ)と呼んだそうですが、その材料に使われたのはヤシ科のタラジュ(オウギヤシ)で、同じような使い方が出来ることからタラヨウと名づけられたようです。貝葉には経文が書かれたところからタラヨウが寺社に多く植えられることになったようです。また字が書けるところから、郵政公社が葉書の木と定めました。字が書けるのは細胞内の酸化酵素の働きでタンニンが黒くなることによるそうです。タラヨウの葉では火を近づけると酸化酵素の働きで、円紋(死環)がみられます。ソヨゴ(№305)の項にも記載したモチノキ属に広くみられる現象です。
 タラヨウの実は赤く、鳥が食べることで種子散布します。しかしこの種子が1年目に発芽することは少なく、1年ほど休眠した後に発芽します。そのため、造園樹として利用する苗木は挿し木で増やされます。また、常緑広葉樹は一般に燃えにくく、京都府綾部では「火防(ヒブセ)の木」として植えられました。
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▲タラヨウ
▲タラヨウの葉
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▲タラヨウの葉裏に字を書いたもの
▲タラヨウの葉の死環

オオゴキブリ(№338)

 連日続く猛暑を避け、里山へ出かけました。山道の落ち葉の下をカブトムシのような甲虫?らしきものがごそごそ。落ち葉をのけてみると、そこにいたのはオオゴキブリでした。
 日本には52種類のゴキブリの仲間がいます。そのうち、家庭内で繁殖するゴキブリは僅か6種類と言われています。オオゴキブリも森林にすむゴキブリで、腐食した木材を餌としています。シロアリ同様に、腸内にセルロース分解菌を共生させ、セルロースを主食として生きています。したがって、家庭内の食品類を食べあさる家住性ゴキブリと比べ清潔でかわいい昆虫と言えるでしょう。
 オオゴキブリは体長4.0~4・5cmと大きく、扁平で体色も真っ黒、つやがあり、脚にはトゲがあります。となると、かわいい昆虫とはいいにくいかも。また、この成虫の殆どすべてが翅がぼろぼろです。これは、朽木の中で集団生活している間にすり切れたとか、あるいは仲間にかじられたものだといわれています。
 比較的低温にも強いらしく、冬も朽木の中で越冬するようです。めったに朽木の外を出歩くことがないため比較的珍しい種類とされ、栃木県ではレッドデーターブックで要注目種とされています。
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▲オオゴキブリ
▲オオゴキブリ

ヤブデマリ(№337)

 夏の暑い日、渓谷沿いの山道で枝をほぼ水平に伸ばし、上向きの赤い果実を多数つけた低木を見つけました。この時期、緑ばかりの山中で、鮮やかな赤い果実は非常に目立つ存在です。
 ヤブデマリといい、スイカズラ科ガマズミ属の低木で、花は晩春白色で、中央部は両性花(雌しべ、雄しべを持ち種子をつける)、周囲に装飾花(大きな花びらを持つが雌しべ、雄しべは退化し実をつけない)を持った花をつけます。ヤブデマリの両性花がなくなり、すべて装飾花になったものが園芸品種のオオデマリです。オオデマリは両性花がないため、このような果実はつけません。ヤブデマリの果実は熟すと黒くなり、葉裏には星状毛が見られます。
 オオデマリに対しコデマリと呼ばれる低木がありますが、これはバラ科の花木で花の印象から名付けられたものと思われます。
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▲果実をつけたヤブデマリ
▲果実をつけたヤブデマリ
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▲果実をつけたヤブデマリ
▲ヤブデマリの葉

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