ホウネンエビ(№336)

 田植え後、数日たった水田を見ると体長1、5cm~2、0cmで、尻尾(尾叉と呼ばれる)が鮮やかな朱色、体は淡緑半透明、頭部には左右に突き出した目を持ち、背面を下にして泳いでいるエビのような生き物を見ることがあります。
これはホウネンエビといい分類上は甲殻亜門鰓脚綱(ミジンコ綱)ホウネンエビ目に属する動物です。
 この動物の卵は乾燥に非常に強く、初夏の頃、土壌表面に産卵された卵は、乾燥土壌の中で長期間休眠状態で過ごし、水と温度を得ると直ちに孵化し幼虫から成虫になる面白い生態を持っています。このように、乾燥に強く水と温度があれば直ちに孵化する性質をクリプトビオシスと呼び、子供向け飼育セットや小魚のえさ動物として利用されています。
 水田にはクリプトビオシスを示すカブトエビも同時に発生しますが、カブトエビは土の上を這い回ることで水田雑草を浮き上がらせ、除草の助けになりますが、ホウネンエビはそのような役にも立たず、人に危害を与えることもなく、プランクトン類を餌としてひっそり生きている動物の1種で僅か20日程度で死に絶えます。
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ホウネンエビ
ホウネンエビ卵
▲鰓脚と呼ばれる鰓(えら)を上に泳ぐホウネンエビ成虫
▲土の表面にばら撒かれたホウネンエビの卵

ツタ(№335)

 壁面緑化資材としてよく利用されている植物にツタがあります。紅葉が美しいためモミジツタとかツタモミジ、ナツヅタなどとも呼ばれます。
 ツタの茎は先端が花軸や吸盤になると茎の成長が止まります。しかし、腋芽(先端の節から出る芽)が新しい茎となって伸びるため、茎は少しジグザグに伸びるような形になります。このような伸び方を「仮軸(状)分枝」と呼びます。
 ツタは葉の出方にも特徴があり、葉間(1枚の葉と次の葉の間隔)の長さが短ー長ー中ー短・・・・・を繰り返します。先端には壁などに付着するため吸盤の付いた付着根が出来、吸盤から粘性物質を出すのみではなく、酸性物質も出し、壁を溶かし養分も吸収するようです。また、茎は節のところで折れやすく茎を壁面に残しやすくしています。落葉の際も、葉身を先に落とし、数日後に葉柄を落とします。このような落葉の性質はヤブカラシ、ノブドウでも見られます。若い葉は3出複葉(クローバーのような出方)、その後3裂単葉(切れ込みが2箇所で、3枚の葉に見える)が出るなど葉の形も複雑な様相が見られます。
 春先、ツタの軸を切り、樹液を集めて煮詰めると甘味料となります。そのためアマヅル、アマカヅラと呼ばれることもあります。ブドウの仲間ですので、ブドウのような果実をつけますが渋くて食べられません。
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▲壁面を覆ったツタ
▲ツタの吸盤
▲葉を除いたツタの枝(仮軸分枝、ジグザグに伸長)
▲ツタの若い葉(3出複葉)
▲ツタの果実

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ハイイロゲンゴロウ(№334)

 7~10月にかけて水田、池、プール、噴水池等の水のたまっているようなところをよく見ると、水中をぐるぐる回るようにすばやく泳いでいる、体長1cm~1.5cmの小さな虫が目に付きます。都会の水溜りでも十分生きていけるハイイロゲンゴロウです。
 ゲンゴロウの仲間の多くは、水に続いた陸地(田んぼの畦のようなところ)でないと蛹化(蛹になること)できないため、畦や河川、池がコンクリートで固められると住めなくなりますが、ハイイロゲンゴロウは、僅かな土塊があればその中で蛹化することが出来るため都会の水溜りでさえ生活することが出来ます。また水面に浮かんだ状態から飛ぶことが出来る(多くのゲンゴロウの仲間は、陸に上がってから飛ぶ)ことや、他の小動物特にボウフラなどをえさにするなど都会派ゲンゴロウとして生き延びてきました。
 水中生活をするため、翅の下に空気をため、尾端に空気の泡を作り、この泡の中で呼吸で出た炭酸ガスと、水中の酸素のガス交換をしながら長時間の水中活動を可能にしています。このガス交換は、以前に紹介したマツモムシ(№216)と似ています。水中では、前、中脚で物につかまり、ボートのオールのような後脚を左右に広げてバランスをとり尾端に泡をつけた状態で静止しているのが良く見られます。
 成虫越冬のようですが詳しい生態等は不明な点が多い昆虫の一つです。
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ハイイロゲンゴロウ
◀ハイイロゲンゴロウ成虫