ベニフキノメイガ(№300)

 家庭菜園や、ベランダでのプランター栽培などでよく見られる葉菜にアオジソ(オオバ)があります。ハーブ、添え物を始め栄養豊かな野菜としても重宝がられています。栽培も比較的簡単ですが、時々害虫の被害にあって栽培を諦めることがあります。
  順調に収穫できていたのに、突然新葉が枯れ、新芽にクモの糸のようなものが見られるようになることがあります。この被害の大部分はベニフキノメイガと呼ばれるノメイガの仲間の幼虫によるものです。この幼虫は若令では葉の表面にクモの巣状の巣を作り葉の表面を食害しますが、3令以降は葉を綴り老齢では葉を食べるだけでなく、葉柄(葉の柄)基部をかじるためその先の葉が枯れてしまい、被害が大きくなります。アオジソは生食することが多く、薬剤散布のやりにくい植物です。また手で捕殺しようとしても、動作が以外にすばやく衝撃を受けると落下し見付けるのが困難となりなかなか厄介な害虫です。
 成虫は翅の開長7~8mmの三角形をした小蛾で、シソ、エゴマだけでなくバジルやミントなどシソ科の植物の害虫として8~9月に多く発生し嫌がられる存在です。繭を作り、幼虫態で越冬するようです。
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▲ベニフキノメイガによるアオジソの被害
▲ベニフキノメイガ若令幼虫
▲終令幼虫

テイカカズラ(№299)

 テイカカズラは山野に自生するつる植物で普通種ですが、一般家庭の石垣や生垣に仕上げることもあります。また、最近は斑入りの園芸品種で白斑の入る「ハツユキカズラ」(写真中左)や葉が赤みを帯びる「ゴシキカズラ」、鮮黄色の「オウゴンカズラ」などの園芸種も出回っています。

 テイカカズラは、幼植物時代には地面を這い、葉も1cm程度(写真上左)で葉脈に沿って斑紋が入り美しいものです。この幼植物の枝変わりから園芸品種が作り出されたものと思われます。写真(中右)のように屋外で赤褐色の葉を付ける固体も見受けられます。
 成木になると地上10m程度までも這いのぼります。しかし、茎は比較的細く10mもの植物体を支えることができるのは茎から出る多数の気根が他のものに絡みついているからです。成木の葉は長さ3~7cmにもなり、幼植物とはまったく別物のような葉となり、ツルマサキと区別できないような様相を呈します(写真上右)。花は大木の上部で咲くことが多くなかなか人目にふれません。従って、その果実もなかなか目にすることがありませんが、ササゲのような長さ20cm程度の莢を2本ずつぶら下げます(写真下)。果実の中には冠毛(種子の上端に付く毛)を持った種子が入っています。この植物はキョウチクトウ科に分類されるためその種子もキョウチクトウ果実(№144)のそれによく似ています。  
 茎を切ると乳液を出しますが、これは有毒で皮膚炎や、呼吸麻痺を起こすことがあるそうです。
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▲テイカカズラ幼植物の葉
▲テイカカズラ成木の葉
▲ハツユキカズラ
▲野外で見られた赤褐色の個体
▲テイカカズラの果実

クモヘリカメムシ(№298)

 田植えも終わり一ケ月以上経過すると、畦畔雑草もきれいに刈られた水田の緑が非常にきれいな風景に変わります。この畦畔雑草は、暑いさなか農家の方が草刈機を使って除草作業をされた結果です。しかしこれは、景観維持のための作業ではありません。
 以前に、稲の害虫としてのカメムシ類(№226)を紹介しました。その中にクモヘリカメムシも入っていました。水田から少し離れた空き地にエノコログサが生えていましたが、エノコログサの穂に多数のカメムシが集まり、吸汁の真っ最中でした。このカメムシはクモヘリカメムシです。まもなく、エノコログサの穂は熟し種子となりますが、その頃には稲の穂が出穂し始めますが、クモヘリカメムシも柔らかい稲の穂に移動し、吸汁を開始します。エノコログサで吸汁しているクモヘリカメムシは水稲害虫としての予備軍というわけです。畦畔雑草で待機している害虫はクモヘリカメムシ以外にも多数います。ですから、これらの予備軍を近づけないためにも畦畔の雑草刈が重要な作業となるわけです。その結果として、写真(下段右)のような景観も生まれることになります。
 クモヘリカメムシは体長15~17mmで、非常にスマートなカメムシで一見アメンボウのようにも見えます。水稲の斑点米を発生させるカメムシ類の中でも主犯格の種類です。
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▲きれいに畦草の刈られた水田
▲畦草が放置された水田
▲畦のエノコログサで吸汁するクモヘリカメムシ
▲きれいに管理されている水田群

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