クリタマバチ(№264)

 クリの芽が開く頃、新芽、葉の主脈、葉柄などに赤みがかったこぶが見られることがあります。これはハチ目タマバチ科の植物寄生性ハチが作ったゴール(虫えい、虫こぶ)です。春に伸びた新梢の新芽に産卵された卵から孵った幼虫は、殆どそのまま越冬し、翌春、新芽が動き出すのと同時に活動し、ゴールを作ります。ゴールの中には数個の幼虫室があり、それぞれ1匹ずつの幼虫が入っています。クリの新芽や葉の主脈を犯すためクリの収量減少、生育阻害など大きな被害をもたらします。被害が大きいと枯死に至る場合も見られます。
 もともと中国から侵入した害虫ですが、メスだけで増殖する単為生殖性のため瞬く間に広がったようです。クリの品種によって被害が違うため抵抗性品種を利用したり、成虫発生期の薬剤散布で対策をとっていましたが防除にはかなりてこずっていました。しかし、
1979年に始まった中国からの導入天敵チュウゴクオナガコバチの放飼で発生は鎮静化し、クリ栽培上あまり大きな問題とならなくなりました。
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▲成長点に出来た虫えい
▲主脈上に出来た虫えい
▲虫えい内の幼虫

アメリカディゴ(№263)

 春の花も終わりに近づくと、真っ赤な花を咲かせるアメリカディゴの花が咲き始めます。アメリカディゴは南米原産のマメ科植物で蝶弁花を開き、10月ごろまで次々と咲き続けます。学名はErythrina crista-galliといい、Erythrinaは「真っ赤な」の意味で、crista-galliは「鶏のトサカ」の意味です。
 花の跡には大きな豆の鞘(豆果)ができ、中に種子が入っています。この木は、落葉植物で、春に伸びた枝に花を付けます。そのため、冬から早春に強剪定(アメリカディゴは剪定に強い)し新梢をたくさん付けるようにすると花もたくさん付けます。
 虫媒花のマメ科植物の花は旗弁を正面に大きく立ち上げ花粉媒介者に花の存在をアッピールし、舟弁をプラットホームとして提供しているようです。ところでアメリカディゴも蝶弁花ですので旗弁、舟弁、翼弁を持っていますが、花柄がねじれて旗弁が下になりおしべの基部を包むようになっています。アメリカディゴの花弁は非常に分厚く,
花の色も鳥好みの赤で、いかにも鳥媒花のように見えます。実際原産地ではハチドリなどが訪花するそうです。ハチドリは飛びながら吸蜜しますが、その際上部に大きな旗弁があると邪魔なので上下逆になる方法をとったのでしょうか。
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▲アメリカディゴの花
▲旗弁が下になったアメリカディゴの花
▲旗弁が上になっているマメ科4種の花
 左上:ナタマメ              右上:ハギ
 左下:カラスノエンドウ  右下:シロツメクサ

ウスバシロチョウ(№262)

 5~6月、近畿地方では兵庫県や京都府、滋賀県の一部限られた山間部で、5~6cmのヒラヒラ飛ぶ白っぽい蝶を見ることがあります。この蝶はウスバシロチョウと呼ばれる蝶ですが、シロチョウの仲間ではなくアゲハチョウの仲間です。
 蝶にしては鱗粉(翅に色、模様をつける微小な鱗状のもの)が少なく、透明な翅に僅かな白い鱗粉をつけているだけです。交尾後オス成虫は、メスの尾端に付属物(スフラギス)を付けます。これはメスの再交尾を防ぐためのものといわれ、以前に記したギフチョウの場合も同様の付属物を作ります。交尾後のメスは地上の枯れ枝に、蝶としては大きな(直径1.5mm程度)卵を産卵します。このとき成虫は、幼虫の食草であるムラサキケマンやエンゴサク類の存在にはあまり気を使わないそうです。春に産卵された卵は卵殻のなかで幼虫になりそのまま夏、冬を過ごし翌春(2~3月)外へ出てきます。うまく餌を探り当て充分成長した幼虫は、蝶としては珍しく繭を作りその中で蛹化し5~6月頃成虫になります。
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