マツモムシ(№216)

 小さな水溜りの水面を体長11mm~14mmの小さな虫が泳いでいます。長いオールをこいで進む様子はまるでボートです。よく見ると背泳ぎ専門のようです。
 このムシはマツモムシといいます。後脚が特に長く、多数の毛が生えていて、ボートのオールの役目をしています。中脚、前脚は主として餌を捕まえるのに使います。カメムシの仲間ですが、アメンボのように水面に浮いている餌だけではなく、水中の小さな生き物も見つけ、口吻を差し込んで体液を吸い取ります。そのために頑丈な口吻を持っており、手で捕まえようとすると刺されて痛い目に会うことがあります。
 水中での生活が多いのですが、呼吸は気門(腹部の背中側にある)から空気を吸っています。この空気は、翅の下と体中に生えた毛の間に貯めこんでいるため、水中にいるときは体が銀色に見えます(写真下)。空気ボンベの中にいるような状態ですので、静止するときは何かにつかまる必要があります。しかも、長時間水中にいると呼吸による炭酸ガス濃度が高くなりますが、水中の炭酸ガス濃度との分圧の関係で炭酸ガスが水中へ放出され、替わりに酸素が取り込まれるガス交換をやっているため長時間の潜水が可能になっています。
 捕らえようと網を取りに戻っている間に飛んで逃げたようでいなくなりました。
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▲後脚を広げたマツモムシ
▲翅(体の下側)が銀色に見えるマツモムシ

ソメイヨシノ(№215)

 4月はサクラの季節です。サクラと言えばソメイヨシノを思い浮かべます。
 ソメイヨシノはエドヒガン系サクラとオオシマザクラの交配種と言われています。自家不和合成が強くソメイヨシノ同士の交配では種子はできません。他の品種との交配では種子ができますが、生まれる苗はソメイヨシノではない雑種です。ソメイヨシノは主として接木で増やしています。このように人が手をかけないと100年もすれば消えてしまう品種です。
 ソメイヨシノは葉が出る前に、一斉に花が開き非常に豪華に見えます(写真上)。しかしその片親のエドヒガン(写真下左)は、開ききった花、満開の花、蕾が同時に見られます。仲間の梅(写真下右)もエドヒガンと同じタイプです。ソメイヨシノは、豪華さを生かすために一斉開花品種として人間が作り上げたもので代わりに花期は短くなりました。後者は長期間にわたりだらだらと花を開き、寒暖の変化で昆虫による受粉のチャンスが変化しても、一部の花だけでも受粉させ子孫を残そうとする工夫と言えるでしょう。
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▲ソメイヨシノ
▲エドヒガン
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▲ウメの花

アメンボ(№214)

   水ぬるむと同時にアメンボが現れました
   水上生活をするカメムシの仲間です。日本には約20種のアメンボがいます。陸生のカメムシはいやな匂いを出しますが、アメンボの仲間は飴のような匂いを出します。体つきは細長く棒のように見えるためアメンボと呼ばれます。
   水上に落ちた小さな虫の体液を吸って餌としています。そのため、口(口吻)は写真のように、太く頑丈な槍先のような形をしています。素手で捕まえるとこの口吻で刺されることがありますが、かなり痛いです。
   ちょっと見ただけではわかりにくいのですが、多くの種類が翅を持っており、水を求めて飛びます(写真上、右円内)。前脚は餌をつかみ、長い中脚はボートのオールのように漕ぐのに使い、後ろ脚は方向蛇の役をしています。
   アメンボは体重が軽く、脚には毛が多く、更に脂分を分泌します。さらに脚の先端に爪を持っていません(写真上、下円内)。これらの条件はすべてアメンボが水上に浮くために発達した形質と考えられます。
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%e3%82%a2%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%9c-1024x710▲交尾中のアメンボ
▲アメンボ