チュウレンジバチ(№91)

 バラの葉にイモムシがついていました。しかしこのイモムシは、これまで見てきたチョウやガの幼虫とはちょっと違っています。一見しておかしいのはお尻を上に上げたり、ぐるっと巻いたりしていることです。チョウやガの幼虫は腹の脚(腹脚。成虫になるとなくなり、幼虫の間、ものにつかまったり歩く補助役の脚。)は2~5対ですが、写真左下のイモムシは8対あります。しかも、この腹脚には爪がないため、ものにつかまるのが苦手です。そのため腹部を上げたり、ぐるっと巻いたりしていることが多いのです。
 このイモムシは、チュウレンジバチの幼虫です。バラの茎に縦長の割れ目を入れ、その中に卵を産みます。この傷は目立ちますが、これでバラが枯れるようなことはありません。孵化幼虫は、集団で葉を食害しますので、この時期に捕殺するか殺虫剤を散布して防除します。
 なお、バラにはチュウレンジバチによく似たアカスジチュウレンジバチが寄生します。この2種の区別は幼虫ではむつかしいようです。

 

▲チュウレンジバチ幼虫
▲スギドクガ(チョウ目)幼虫の腹脚(5対)
▲チュウレンジバチ(ハチ目)幼虫の腹脚(8対)

オオバコ(№92)

 山に登る人は、疲れきって下山中にオオバコを見つけてほっとした経験があるのではないでしょうか。オオバコは人の生活圏と切り離せない雑草だからです。つまり、オオバコが生えていると言う事は民家が近いことを意味するからです。なぜでしょうか。
 オオバコは夏から秋に花を咲かせ、結実します。この種子の伝播がちょっと変わっています。と言うのも、人の靴の裏、牛馬車の車輪(今なら自動車のタイヤ)にくっついて運ばれるからです。このくっつく仕組みですが、写真右上の種子が地上に落ち、雨などで水分を得ると左下の写真のように種子の表面に粘液を出し、この粘液でくっつくようになります。発芽したオオバコは、踏みつけられても枯れずに生長します。他の草は踏まれて枯れるため、オオバコだけが残ります。一方、踏みつけられることの無い場所では、他の草が早く生長し、丈の低いオオバコは日陰になって生長できなくなります。
 中国では車前草と言われます。
 学名Plantago asiatica L.のPlantagoは「足の裏で運ぶ」の意味です。
(*写真をクリックすると拡大されます)

 

▲オオバコ
▲乾燥種子
▲吸湿種子(粘液にくるまれている)

スギドクガ(№93)

 一般家庭の剪定を頼まれた職人が、カイズカイブキで見つけました。といってもそれほど珍しいムシではありません。
 1年に2回、春と秋に発生し幼虫で越冬します。成虫は、薄汚れたガで、翅を広げたときの左右の前翅先端間隔(開張)は4(オス)~6(メス)cmです。針葉樹のスギ、サワラ、ヒノキ、ヒマラヤシーダー、コニファー類を食害します。集団で発生し、軟らかい新葉ではなく硬い古葉を好んで食べます。植林直後の苗木では大きな被害を出すこともあります。生垣などに発生したときは殺虫剤を丁寧に散布することで防除できます。
 分類上はドクガ科で長い毛を生やしていますが、毒針毛は無く、刺す事はありません。
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◀スギドクガ幼虫

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