イチモンジセセリ(№88)

 晩夏から初秋にかけて、多くの花に吸蜜に来る茶褐色の、一見ガのようなチョウを多く見かけるようになります。
 分類上はチョウ目セセリチョウ科で、この仲間は胴が太く翅の色も地味なものが多いチョウです。
 イチモンジセセリは南方系のチョウで、春には少ないが夏から秋にかけて個体数を増やし、同時に北の方へと分布を広げます。9月には集団で移動するのが見られることがありますがどこへ行くのでしょうか?
 イネ科植物を食べますが、稲を加害する場合には害虫のイネツトムシと呼ばれます。

▲イチモンジセセリ成虫
▲稲の被害(イネツトムシ)

クサギ(№89)

 晩夏~初秋の頃、野山に白い花を塊状に咲かせる潅木があります。葉に独特の匂いを有するため、クサギと呼ばれます。この匂いは、人にもよるのでしょうが、クサイと言うほどのものではないと思いますが・・・。香りの強い白い花を咲かせた後、紅紫色のガクに紫黒色の果実を付けよく目立つようになります。
 クサギも遺伝子多様性を維持するため、以下のような方法で自家受粉を可能な限り避ける工夫をしています。クサギの花は雄性先熟といって、開花直後は雄花の機能を優先し、花粉を出し訪れた昆虫に花粉の運搬を託します。そのため、花糸(雄しべの軸)は葯(花粉の入った袋)の中央下側についています。つまり、花粉は葯の上面に出ることになり、訪れた昆虫の腹部に花粉が付着しやすくなります。一方、未熟な雌しべは柱頭(雌しべの先端)を下に向け、花粉を付けて訪れた昆虫から花粉を受けにくい状況を保ちます。
 次に、花粉の放出を終えた花の雄しべは、下方に曲がり、それまで下を向いていた雌しべが雄しべに代わって上を向き受粉可能な状態になります。その際、柱頭は開き花粉を受け取りやすい体制となります。群がって咲いている花をよく観察すると、1本の雌しべが下方に垂れたものと、しゃんと上を向いたものがあるのに気づくでしょう
▲クサギの花
▲雄性期の花
▲雌性期の花
▲雄性期に花粉を出す雄しべ
▲雌性期の雌しべ柱頭

カニグモ(№90)

 ヘリアンサス(ヒメヒマワリ)の花の上に両手を一杯に広げた薄緑色のクモが見られます。日向ぼっこをしているのではありません。彼(彼女?)はこうして餌の到来を待っているのです。
 クモにはクモの巣を張って餌がかかるのを待つ仲間と、クモの巣を張らない仲間がいます。クモの巣を張らないクモの中でも、ハエトリグモのように餌を探し回るクモと餌の到来をじっと待つ待ち伏せ型のクモがいます。このクモは待ち伏せ型で花を尋ねてくる虫たちをじっと待っています。
 4対の脚のうち、前3対は前向きに大きく開き、後ろ1対を後ろ向きに構えた様子がカニに似ているため、カニグモ(ハナグモ)と呼ばれます。頭胸部(クモでは、昆虫のように頭部と胸部が分かれず、一緒になっている)の先端に、2列に並んだ8つの眼が有りこれで獲物を見張っています。決して寝ているのではありません。
◀花の上で獲物を待つカニグモ

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