クスノキ(№75)

 街路樹にはたくさんのクスノキが植えられています。
 クスノキは常緑樹と言われますね。しかし、4月上旬に、クスノキ並木を歩くと足元に多数の落葉が見られます。これはクスノキの落葉です。常緑樹と言えども古い葉は新しい葉に更新され、クスノキでは春に一斉に更新されます。そのため、落葉樹の秋の状態が再現されます。春に落葉しなかった古葉は夏にも落とすことがあるようです。また、クスノキは、古い葉だけでなく、混みあった枝も落とします。これを落枝と言います。クスノキは暖地性の木であるため、冬季の寒さが厳しいところでは冬に全ての葉を落としてしまうこともあるそうです。
 クスノキには、フシダニの仲間(小さくて顕微鏡でないと見えません)が寄生します。クスの葉の裏を見ると葉の基部近くに3本の太い葉脈が見られますが、この付け根付近に2つの小さな穴が見られます。この中がフシダニの住家でドマティアと呼ばれる部屋の入口です。この部屋はフシダニが寄生して出来るのか、クスノキがフシダニのために準備したのかいろいろな説があります。皆さんも調べてみては如何ですか。
▲クスノキの落葉
▲ダニ部屋(ドマティア)

ヤノイスアブラムシ(№74)

 イスノキと言う名の樹木があります。何の特徴も無い普通の木ですが、葉に多数の虫嬰(ゴール、虫こぶ)をつくるためイスノキということがわかります。
 このコブは新葉が開くと間もなく発生してきます。このコブをイスノハタマフシといいます。4月上旬、新しいコブを割ってみますと、中は空洞で、その中に0.5mm程度の淡黄色の虫が1匹見つかります。これがヤノイスアブラムシです。このアブラムシはコブの中で1匹(メス)だけで子虫を産みどんどん増えます。6~7月頃に葉の裏側の中央部から、翅を持ったアブラムシの成虫がたくさん飛び出し、ナラなどの木(中間宿主)で夏を過ごし秋に交尾したメスがイスノキに産卵します。
 イスノキには他にイスノフシアブラムシも寄生し大きな(3cm程度になる)コブ(イスノキエダナガタマフシ)を作ることもあります。このコブは、アブラムシが出た跡の穴を口に当てて吹くと「ヒョー」と音がするためイスノキはヒョンノキとも呼ばれます。
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▲イスノハタマフシ
▲ゴールの中のヤノイスアブラムシ

フタスジサナエ(№73)

 八重サクラの花がまだ残っている4月下旬、ムシ屋仲間とトンボを見に出かけました。トンボと言えば夏から秋の昆虫と考えられますが成虫で冬を越す種類もいますし、3月になれば新しい成虫も出てきます。早春の蝶は話題に上がりますが、早春のトンボが話題にならないのはちょっと寂しいですね。
 この日は寒い1日でしたが、溜池を見て回りました。その中の一つで羽化最中のフタスジサナエを見つけました。見つけたときはまだ翅も伸びていませんでしたが、30分もするうちに翅が伸びだしました。
トンボの羽化は直立型(ほぼ水平面で羽化。背中が割れ、虫体が垂直に立ち上がるタイプ。)と倒垂型(垂直面で羽化。背中が割れ、虫体が頭を下に反り返るタイプ。)に分けられますが、フタスジサナエは前者の直立型です。
 水際で羽化し、翅が伸びるにしたがって上へ這い上がってくるのが観察されました。このトンボは5月を中心に活動し6月にはいなくなる早春のトンボと言えるでしょう。
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▲羽化直後のフタスジサナエ
▲羽が伸びだしたフタスジサナエ

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