ヌルデシロアブラムシ(№63)

 ウルシに似た植物にヌルデがあります。ヌルデにヌルデシロアブラムシが寄生すると虫嬰(虫こぶ、ヌルデノミミフシ)が出来ます。中にはアブラムシが住んでいます(写真下)。この虫こぶは、寄生部位と虫嬰の形から、葉にできる袋状のミミフシ(五倍子とも言われます)、小葉片の中央脈が数回分岐するハナフシ、枝の先や葉脈が分厚く膨らむキフシなどに分けられます。
 この虫嬰にはタンニンが多く含まれており胃炎、扁桃腺炎などに効く漢方薬として使われます。その他に染料や皮のなめしなどにも使われます。古くは、既婚女性の鉄漿(おはぐろ:歯を黒く染めた)としても使用されたそうです。
 ヌルデの果実は表面が白っぽく見えますが、これを舐めると少し塩辛く感じます。これは塩類の一つのリンゴ酸カルシウムによるもので、食塩の成分(塩化ナトリウム)とは別のものです。
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▲ヌルデノミミフシ
▲ヌルデシロアブラムシ

コセンダングサ(№62)

 秋から冬にかけ、野原を歩き回るといわゆるひっつき虫と呼ばれる草の果実が衣服に多数付くことがあります。その代表的なのがこのコセンダングサです。
 かつてはアメリカセンダングサが多かったのですが、最近はコセンダングサが増えています。コセンダングサの花には、アメリカセンダングサのような大きな総苞がありません。また舌状花もありません。他にセンダングサという種類もありますが、最近ではセンダングサといえばコセンダングサをさすようです。この仲間には、その他に多くの種や変種(写真下、コシロノセンダングサ)が見られ、雑種もあるらしく分類は複雑です。
 コセンダングサの痩果(種皮が薄く種子に密着している種子)は3~4本のトゲを持っており更にこのトゲには下向きの数個のトゲがついていて(写真上、円内)一旦くっつくと外れにくくなっています。このトゲで人間の衣服や動物の毛皮にくっついて遠くへ運ばれます。
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▲コセンダングサの果実
▲コセンダングサの花
▲コシロノセンダングサの花

クロスジフユエダシャク(№61)

 12月初め、落ち葉の積もる林間を歩いていると突然足下から小さな蛾が飛び出しました。
 これはクロスジフユエダシャクのオス成虫です。昆虫類は変温動物のため、外温が低くなったり、高すぎたりすると行動が不活発になるのが普通です。しかし中には、他の昆虫が動かない冬に出てきて活動する変わり者がいます。その一つがこのクロスジフユエダシャクです。しかも、飛び回っているいるのは全てオスです。メスの翅は退化し樹木の幹上を這い回るだけで、飛ぶことはできません。翅がない方が、冬期間の体温放出が少なく体温を維持しやすいのかもしれませんが、オス、メスともに翅が無いと近親交配が起こりやすくなります。そこで、オスだけは翅を持ち自由に移動できるようにして近親交配を防いでいるのでしょう。
 メスはオスを呼ぶ匂い物質であるフェロモンを出し、この匂いに寄せられたオスと交尾した後産卵します。卵はコナラ、ミズナラ、アベマキ、クヌギなどの新芽が開くと同時に孵化し、これらの葉を食べて5月頃に蛹化(蛹になること)し、冬になると成虫が出てきます。成虫は、食べ物は一切とらず、交尾と産卵だけが仕事です。
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◀クロスジフユエダシャク雄成虫

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