アオマツムシ(№57)

 11月に入り、アオマツムシの死骸があちこちに見られるようになりました。8~11月の夜、あちこちの街路樹からリリィーリィーと大声の大合唱が聞こえるようになりますが、この昆虫がその声の主です。夏の終わりには、昼はセミ、夜はアオマツムシが騒々しい音を立てることになります。コオロギやスズムシの仲間ですが、この大声は、お世辞にも風情があるとは言いがたく、むしろうるさいと表現した方がいいような声です。また、その体色もコオロギの仲間にしては珍しく緑色をしています。これは、コオロギやスズムシが地上生活をし、アオマツムシが樹上生活をするため、生活環境の色に合わせた保護色となっているのでしょう。
 アオマツムシは今から、100年ほど前の1898年に東京で発見された帰化昆虫です。中国から浸入したものと考えられています。
 樹皮に産卵するため、植木とともに移動したらしく、今では九州から関東まで、各地の団地や住宅地の街路樹で繁殖しています。不思議なことに人里離れた雑木林ではほとんど繁殖しません。
 最近、樹上生活者のアオマツムシが地上でも活動することが知られるようになりました。地上はコオロギ、スズムシの世界、樹上はアオマツムシの世界と住み分けられてきたのが、いつかこの騒々しい昆虫が夜の世界を征服することになるのでしょうか。
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▲アオマツムシ

ヒマワリ(№56)

 夏から秋の花の代表として、ヒマワリがあげられます。ヒマワリはキク科の花で、茎の先に一つの大きな花が咲いているように見えますが、茎の先端が膨らみ、そこに多くの花が集まり一つの花のように見えているのです。花びらのように見える外側のは、昆虫を集めるために、大きな花びらと、派手な色をしていますが雄しべは無く、雌しべも不完全(舌状花)で種子はできません。内側の花は雌しべ、雄しべはそろっていますが、昆虫を集めるための花弁は退化しています(筒状花)。つまり外側の花は昆虫を集めるための花、内側の花は種子を作るための花と分業しています。
多数の花は、一斉に開くのではなく、外側から順に内側へ開いていきます。(写真上左)
 ヒマワリの名称は、花が日を追って回ることからつけられたものですが、若い蕾は確かに日を追って回りますが、開花するとほぼ東を向きます。ただ、最近の品種でスプレー咲きのものは東を向くとは限らずばらばらです。
 ところで右上写真のヒマワリは、筒状花の一部に緑色の部分が見られます。そもそも花びらは葉が変化したものと言われますが、この緑の部分は花の器官の一部が葉に戻ったもの(先祖返)と思われます。
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▲外側から順に開花する
▲先祖返りの葉?
▲一斉に東を向いて咲く

クロマダラソテツシジミ(№55)

 聞きなれない名前ですが、シジミチョウの1種です。もともと日本にはすんでいないチョウで、台湾やフィリピンの亜熱帯を原産地としています。このチョウが昨年、兵庫県宝塚市、大阪府池田市、で発生しました。本年は大阪府(池田市、大阪市、堺市、和泉市)、京都府精華町、和歌山県太地町、、滋賀県大津市など広範囲で発生が認められました。
 チョウそのものはかわいいシジミチョウで、翅の内側は日の光を受けてキラキラ光る構造色をしています。幼虫はソテツの新芽を食害するため、被害を受けたソテツが成長すると葉の食害痕が白化し、見苦しくなります。ソテツを庭園樹としている場合、正真正銘の害虫です。
 クロマダラソテツシジミは、もともと日本にいなかったチョウです。誰かがいたずらで、幼虫をばら撒いたのではないか?ともいわれますが、これほど広範囲にばら撒けるでしょうか?成虫が飛んでいるのを見ると飛翔力はかなり強いようにも思われます。また日本では冬を越せないとも言われます。昨年の発生と今年の発生は偶然なのでしょうか。いろいろと謎の多いチョウです。写真は和泉市内で。
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▲クロマダラソテツシジミ成虫
▲被害を受けたソテツ

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