アメリカシロヒトリ(№54)

 春、秋の年2回、街路樹はじめ、庭園樹の葉に毛だらけの毛虫が発生することがあります。アメリカシロヒトリの幼虫です。戦後アメリカから東京に侵入した害虫です。5月中~6月と8月上~9月の年2回発生します。最初は網を張り、その中で集団生活をしていますが、脱皮を3回重ね4令幼虫になると1匹ずつ分散して葉を食害します。終令幼虫は、白くてふさふさした毛を多数つけていますが、刺毛は無く刺しません。秋に発生した幼虫は、蛹で冬を越します。成虫は、白色の蛾です。サクラ、ヤナギ、プラタナス、カキ、バラなど加害植物は百数十種にもなります。
 春の発生は発生時期が比較的そろっていますが、秋になるとバラバラと長期間にわたることが多くなります。
 防除は春が有効です。しかし、手入れの悪い街路樹や公園で発生し、民家へ飛来する例も多く、年2回の防除を余儀なくされることも多いです。
 この蛾は、不思議と人里離れた山の中では発生しません。山では天敵が多いためとも言われますが、アメリカシロヒトリの天敵であるアシナガバチ、スズメバチ、スズメ、ムクドリなどは街中でも結構見かけるのですが。
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▲アメリカシロヒトリ若令幼虫
▲アメリカシロヒトリ終令幼虫

キキョウ(№53)

 秋の花の代表として、キキョウの花もその一つに上げられます。
 キキョウの花を覗いて見ました。いくつかの花を見ると、その雌しべ、雄しべの形が、写真のように2種類あることに気づきます。
 キキョウの花は同じ一つの花の中に雌しべと雄しべを持っています(両性花といいます)。両性花は自身の花の花粉で受粉する機会が多くなります。これでは遺伝的に環境抵抗の弱い個体を作ることになります。一般的に花は、自身の花粉で受粉する(自家受粉)のではなく同種他花の花粉で受粉する(他花受粉)ことを望みます。
 キキョウは自家受粉を避けるため、雌しべ、雄しべの成熟時期に差をつけました。写真右は若い花で、雄しべが熟し、花粉が出ています。この時、雌しべは未熟で受粉できません。やがて雄しべがその機能を終わる頃に左の写真のように雌しべが熟し受粉可能となります。この時、自身の花粉はもうありませんので他花の花粉で受粉することとなります。
 このように、両性花で雄しべが先に熟し、雌しべが後で熟すことを雄性先熟といいます。
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◀キキョウの花

キイロテントウ(№52)

 テントウムシは植物の害虫であるアブラムシを食べてくれる益虫と言うのが一般的です。しかし、中には以前紹介したニジュウヤホシテントウムシのように植物の葉を食べる害虫もいます。
 今日紹介するのは、変わり者テントウムシの筆頭に来ると思われるキイロテントウです。このテントウムシは、体長3mm程度で非常に小さく、翅は黄色一色で模様もありません。胸の背面に黒い点が2つあり、正面から見ると目が4つ有るように見えます。
 変わっているのはその餌で、幼虫も、成虫もうどんこ病菌を食べます。うどんこ病は葉に白いうどん粉(胞子)をかけたような病斑を作ります。うどんこ病は非常に多くの植物に発生しますが、症状は似ていても病原菌は必ずしも同じではありません。しゃしんは、アラカシのうどんこ病です。キイロテントウにはうどんこ病菌の種類別嗜好性はあるのでしょうか。
 このうどんこ病菌を食べるキイロテントウは病菌を食べるため益虫と考えられますが、食事中に体につけたうどんこ病の胞子をばら撒くような事は無いのでしょうか。ちょっと気になりますね。
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▲キイロテントウ
▲アラカシのウドンコ病

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