コヤマトンボ(№42)

 泉試験地の近くの渓流で、クモのように脚の長いヤゴ(トンボの幼虫)を見つけました。これは、コヤマトンボの幼虫です。コヤマトンボは渓流に多く住み、オニヤンマを小さくしたような美しいトンボです。ヤゴは2~3年水中生活をします。トンボは不完全変態(卵ー幼虫ー成虫と変化し蛹の時期がありません)で、幼虫から成虫に変身します。そのため、幼虫も成虫と同じような構造を持っています。例えば、水中生活をしているヤゴの背中にも翅の形が外から確認できますし、トンボと同じく脚も6本とも前向きになっています。
 しかし、水中生活をするヤゴはお尻から水を吸い込み直腸の気管鰓と呼ばれる器官で呼吸します。また、餌は水中の小動物ですが、下唇が三つ折になっていて餌を見つけると、この下唇を伸ばして先のツメで捕まえ口に持ってくるという特異な方法で餌をとります。
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▲コヤマトンボの幼虫
▲下唇を伸ばして餌をとる

コアオハナムグリ(№40)

 ミカンの花が咲き、あたり一面に強い香りを振りまいています。
 満開の温州ミカンの畑をのぞいて見ました。満開の花は、昆虫に目立つように白色で、強い香りを放ち多量の蜜を出しています。ミカンは、このように花粉媒介昆虫を誘引するために多くのエネルギーを費やしています。この努力に答えるべく、コアオハナムグリ、ヒメヒラタケシキスイ、シロテンハナムグリなどの甲虫類が吸蜜に集まります。当然、花粉の媒介もしています。しかし、温州ミカンは種子ができない雌性不稔性(受粉しても胚珠の発育が停止、退化し種子ができない)と、単為結果性(受粉しなくても肥大する)を併せ持ち、種無しミカンとして育種された品種です。一方、花に来る甲虫は脚のトゲで吸蜜中に子房の表面に傷をつけます。この傷はミカン果実の表面に残り品質低下の原因となり、農家に嫌われます。そのため、これらの昆虫は、害虫として農薬散布の対象になり防除されます。
 つまり、温州ミカンが多大のエネルギーを使って昆虫を集めようとした努力が報われることは無いのです。
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◀ミカンの花にやってきたコアオハナムグリ

ヒラドツツジ(№41)

 5月になるとツツジ、サツキが満開となります。
 ヒラドツツジの花は赤紫色でアゲハチョウによくアッピールするようです。雄しべや雌しべは長く飛び出して上向きに反り返っています。これは、アゲハチョウが吸蜜に来た際、その体を利用して花粉の送受粉を確実にするための工夫です。また、多数の花粉が糸で繋がったネックレス状となり、一度に多くの花粉を運ばせる工夫も見られます。花弁上部中央の内側に、濃赤色の斑点が見られます。これは、昆虫にこの奥に蜜があるよと教えているマークで蜜標(ガイドマーク)といわれます。この蜜標から花の奥のほうに向かって花弁が丸く管状になっているのが見られます。花を輪切りにするとよくわかります。この管の中にアゲハチョウは長いストロー状の口吻を差込み、蜜を吸います。しかし、その様な口器を持たない昆虫は蜜を吸うことは出来ません。
 このようにヒラドツツジも昆虫(特にアゲハチョウ類)による花粉媒介を期待し、さまざまな工夫と努力をしています。しかし、ヒラドツツジは近縁種交雑による雑種不稔性を持っているため種子は出来ません。ヒラドツツジもむなしい努力を続けているのでしょう。
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▲ヒラドツツジの蜜標
▲ヒラドツツジの花粉(連なっている)
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▲輪切りにしたヒラドツツジの花筒

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