あ日ごとに昼が長くなり、風の暖かさ・香り・湿り気が変わってきました。春の予感にワクワクする日々です。 先日、庭の片隅にフキノトウを見つけました。レシピを探して、ニンニク・松の実・アンチョビを加えてパスタソースを作ってみました。ほろ苦さが春を感じさせて、とても風流な気分になれました。
我が家では2月の下旬、「雨水」にあたる日に、リビングに雛人形を飾りました。この日に飾ると、その家の女の子は良縁に恵まれるとのことです。ずっと殺風景だった部屋が、急に艶やかで華やかになりました。
あこの雛人形は、とても古いものです。ちょっとくすんだ色合いで、目が細い古風な顔をしています。私の幼い頃に、両親が買った物です。 当時まだ若かった両親はお金がなく、とても一度に雛人形セットを買うことはできませんでした。 そこで、毎年一段ずつ買い足していったそうです。五段目の仕丁(しちょう)の人形が届いた日の事は、私もうっすらと覚えています。
あ当時住んでいたのは、団地の2DKだったので、四畳半の部屋が雛人形で占領され、その片隅で弟と窮屈に眠る事になりました。それでも、とても心がうきうきしたのを覚えています。
あ雛人形を飾る頃は、寒くて、時には受験シーズンになります。定期テストや受験がうまくいかずに、肩を落として帰ってくる日も多かったのです。疲れて冷え切って帰宅した時に、緋毛氈の明るい色と雛人形が目に入ると、そこだけは春の光が暖かく射し込んでいるように見えて、心がほっと安らいだものでした。
ああれから長い年月が流れました。雛人形はこんどは長女を見守ってくれる存在になりました。 傷んでしまった道具類を買い替えて、一見すっきりと新しくなりましたが、人形そのものは古いままです。
あ今、長女は遠い外国で暮らしています。 雛人形は今年は特に遠くまで目をこらして、ハラハラしながら、見守ってくれているのかもしれません。 |