あ今年は暖冬だと油断していましたが、時々厳しい寒さがやってきます。季節は行きつ戻りつしながら、ゆっくりと春になっていくのでしょうね。雪やみぞれが降ったり、寒い日が続くと、本当に春が待ち遠しいです。
あ私は先日、法事で山陰に行ってきました。ちょうど三十年に一度の寒波と予報が出ていた頃です。
あ時々行くだけで、住んでいる方に較べれば小さな苦労なのでしょうが、山陰の雪にはいつも緊張します。雪に閉じ込められ停電した家で過ごした記憶や、道路が閉鎖され膝までの雪の中を歩いた記憶が蘇ります。でも、行かないわけにはいきません。悲壮な決意のもとに出かけました。
あ始めは穏やかでした。青空の中国自動車道は快適です。ところが、米子自動車道に入り、長いトンネルを抜けたら、景色は一変します。そこはもう、雪国そのものでした。あたりは暗くなり、雪が風に舞い、道こそ黒っぽいものの、周りは全部真っ白です。
時々、凍結防止剤散布車がバラバラっと粒状のものを播き、三台の除雪車が隊列を組んで進むのを見かけます。頼もしいです。まるで、国際救助隊が私たちを助けてくれるようです。「タンタタタ~~ン タタタッタ」とサンダーバードのテーマ曲が鳴り響くようです。それでも、私たちが通った三時間後は閉鎖されたそうです。サンダーバードも、自然の脅威には敵わなかったようです。
あ帰りは運よく、高速道路は閉鎖されていませんでした。でも、道は真っ白です。アスファルトの黒い部分が見えないだけでなく、ラインもガードレールも標識もよく見えません。この時も、何度も隊列を組んだ三台の除雪車を見かけました。
あ雪の山陰に行くと、私の日頃の自然観を、薄っぺらなものに感じてしまいます。自然は常に「人を癒し」「人を慈しむ」存在ではありません。圧倒的な強さで人を威圧し、翻弄し、時には命の危険さえ覚えるほど不安にさせます。
あそんな厳しい冬を過ごすから、春が来た時の喜びは、いっそう大きなものなのでしょう。山陰の春は美しいです。空の色が日に日に明るくなり、雪を頂いた大山は光を浴びて輝きます。ダンコウバイ、マンサクなどの春を告げる花が咲き、ブナの原生林は芽吹きます。 そんな光景を想像していると、ますます春が待ち遠しくなってきました。 |