あ今年は暖かな日が長く続きましたが、いよいよ寒くなってきました。朝はぬくぬくした布団からなかなか抜け出せなくて、ついぐずぐずしてしまいます。
あこんな朝は、昔我が家にいた子犬の事を思い出します。もう、15年も前のことです。犬好きな長女の願いで、我が家は盲導犬のパピーウォーカーを引き受けました。
あ盲導犬というと聞き分けが良くて、お行儀が良くて・・と思う方も多い事でしょうが、パピー(子犬)は全く違います。やんちゃで、人懐っこくて、好奇心が強くて、家中に嵐を巻き起こしました。
あ子犬にとって、朝は一番寒くて寂しい時です。でも 盲導犬は「ワン」とほえてはいけません。「ワン」と吠えるとたちまち誰かから「ワン NO!」と叱られます。
そこで夜が明ける頃からでしょうか。遠慮がちに小さな声で「ヒャ~ン ヒャヒャ~ン ハヒ~ン!」と ワン以外のあらゆる言葉で私たちに必死に訴えます。
目覚し時計がなると もう我慢できません。その声はどんどん大きくなります。たまりかねてケージのドアを開けると とび出して誰かの布団に潜り込みます。
起きるまでのほんの5分程なのですが 暖かい子犬がぴたっとくっついてくるのは、私たちにも、心安らぐ、とても楽しみな時間でした。
あ人間と子犬が一緒に寝る事は、あまり良くないのかもしれませんが、これから厳しい訓練が待っている子犬に 私たちは「今だけ!ほんのひと時だけ!」と受け入れていました。私たちのほうも、心のささくれだった部分を子犬に癒されているのを感じていました。
あこうして、ボランティアをしたのかされたのかわからないような一年は、瞬く間に過ぎ去り、子犬は私たちに多くの思い出と写真を残して、訓練所に戻りました。
あもうずっと昔の話なのに、寒い朝には時々、甘えん坊の子犬の、あの鳴き声と、むくむくとした暖かな感触が、鮮明に蘇ってきます。 |