一番暑い季節になりました。この時期になると、「自然とともに生きる」などの綺麗事は言ってられなくなります。なりふりかまわず、厳しい毎日をやり過ごしています。
そんな日々の中にも、とてもささやかですが至福の時間があります。早朝の目覚めの少しの時間だけ、寝ころんだまま空を眺める事です。我が家は軒や庇がほとんどないので、カーテンを開けるととても広い空があります。鳥の声、虫の音を聞きながら、うす青い空を眺めながら、まどろみます。窓から吹き込む朝の風は、まだひんやりしていて、うすい雲がゆっくり流れていきます。何もせず、何も考えず、夢なのか現実なのか区別のつかないぼんやりした状態で、ただ空を眺めます。貴重な朝の時間をこんな風に過ごすのは、とても無駄で、とても悪い事で、その分とても贅沢な気がします。
私は幼い頃から、”何かをぼ~~っと見ている事” が好きでした。蛇口から出る水、夕立の雨粒、ありの行列・・・飽きることなくいつまでも見ていました。 一番好きだったのは、近所の川でした。夏休みには川べりで、ただじっと川を見ていました。ゆるい流れにクロモがゆらゆらして、メダカが隊列を組んでいます。ときどきカエルやザリガニが現れて波が立ち、キラキラと水面が揺れます。私の心は現実から離れて、水の中にいたのかもしれません。
もちろん、「時間を無駄にせず、勉強やお手伝いをするべき!」と思っている母からは、いつも叱られていました。(ほとんどの親がそうするでしょうね。)でも、何も有意義な事をせずに、無意味に時間を費やすのは、いけない事だけどその分とても贅沢で魅力的に感じられました。
夏休みになりました。今の子どもたちはどんなふうに過ごしているのでしょう?あちこち出かけ、様々な体験をいっぱいするのは、もちろん素晴らしい事です。 でも、普段は忙しくてできない、大きくなったらもっとできない、ぼ~~っと何もしない、役に立たない時間を過ごすのも、結構素敵な事ではないかと思います。人生の折り返し地点を過ぎて、本当に大切な物はそう多くない事に気がついた今になると、特にそう思います。
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