新緑をわたる風が、気持ちのいい季節になってきました。ツツジやハナミズキなど街を鮮やかに彩る花たちが、急に目立ってきました。春から初夏にかかるこの季節は、植物たちが若い瑞々しさに輝いています。
私は先日、メルボルンに行っていました。
一人の時間が長かったので、のんびりと公園や植物園を散歩して過ごしました。この街は、公園の面積が全体の4分の1を占めます。
広い公園は、本当に人が少なくて、静かです。はるか向こうで、小学生たちがフットボールをしています。池のほとりでは、一組の家族連れがバーベキューをしています。芝生の上を、犬がのびのびと駆け回ります。秋の透明な日差しが降り注ぎ、風が爽やかで、つい「帰りたくない」と呟いてしまうほどでした。
公園にずっと遠くまで広がる芝生は、実に美しく、元気いっぱいです。
「こんなに広い芝生をいったいどうやって管理するの?」と、私は非常に不思議でした。自動潅水システムもついていないし、この広さなら芝刈りも大変でしょう。そう思っていると、ある時偶然、芝刈りの光景を目にすることができました。
耕運機をやや大きくしたような芝刈り車がやって来て、「ドゥ~~ン・ゴゥ~~ン」とダイナミックに走り回ります。ただ、雑に走り回っただけのようにも見えましたが、確かに後には青い香りが漂っています。
この都市は自然を大切にしていて、多くの面積を植物たちに明け渡しています。また多くのこだわりがあるようで、街のあちこちにオーガニックの化粧品や食料品のお店が並んでいます。オフィス街には、大きなスズカケの木が、のびのびと枝を広げ、落ち葉が道路にいっぱい散らばっています。
綺麗な街並みの家の庭には木がいっぱいに植えられています。 どこもあまり強くは剪定をしていないようで、のびのびと育っています。そういえば、街のあちこちでトピアリーを見かけましたが、どれもあまり形にならずに自然なままの枝ぶりでした。
びしっと草花を植え込んだ花壇は、あまり多くは見かけませんでした。
昔、聞いたことがありますが、カナダは冬が雪に閉ざされ白一色になるので、それ以外の季節には花をいっぱい育てて様々な植物の色彩を存分に楽しむそうです。
広い土地と温暖な気候のメルボルンは、あまり手をかけなくても、自然が美しく保たれるので、植物への関わり方が自然体なのかもしれません。
ほんの少しの滞在で、しかも一部しか見ていないので、私の思いは見当外れかもしれません。
でも、広い国土と、多くの資源と、温暖な気候を持った国ゆえの大らかさが、ちょっと羨ましくなりました。
|