2015年5月(May)


 光あふれる新緑の季節になりました。1年間で最もさわやかな季節です。5月2日は八十八夜、5月6日は立夏です。ゴールデンウィークや母の日もあり、何となく心が浮き立つ季節ですね。
ジギタリス(ゴマノハクサ科)
ヨーロッパ、北東アフリカ~西アジア原産です。広く普及しているのはジギタリス・プルプレアです。昔は強心剤を採るために薬草として栽培されましたが今は観賞用です。英名はフォックス・グローブ、和名はその直訳でキツネノテブクロです。ジギタリスという名はギリシア語のディギトゥス(指)に由来し花の形にちなみます。春に茎を伸ばし初夏に長さ30cm~50cmの穂状に開花します。花は筒状で紫紅色、内側にそばかすのような斑点ができます。本来は1mを越す大型の草花ですが、50cm前後に収まるコンパクトな品種もあります。
スズラン (ユリ) キジカクシ科に分類される場合もあります。
本州中部~北海道に分布する宿根草です。小さな鈴が下を向くように咲く姿が可憐です。キミカゲソウ(君影草)・タニマノヒメユリ(谷間の姫百合)の別名があります。地中の浅い位置を地下茎が走り春に葉の間から花茎を伸ばし先端に芳香のある白い釣り鐘状の花を咲かせます。花茎はあまり長く伸びず、葉の下に隠れるような位置で咲きます。花後は丸い果実ができ、熟すと赤く色づきます。可憐ですが毒性があります。花言葉は「純愛」「意識しない美しさ」「幸福の再来」
チョウジソウ(キョウチクトウ科)
東アジア・北アメリカ原産の夏緑性多年草です。日本にも自生していますが、園芸種でよく使われるのは北アメリカ原産種のホソバチョウジソウやヤナギバチョウジソウが多いようです。淡い青紫の星型の花を初夏に咲かせる野趣のある宿根草です。花つきはそれほど多くなく、花色が淡いこともあって目立つ花ではありませんが、日本の気候によく合い和風や自然風の庭に使われています。春先に一気に茎を伸ばしてその先に花をつけます。葉は細長く少し垂れぎみになります。キョウチクトウ科なのでアルカロイドを含み有毒です。
モッコウバラ (バラ科)
中国が原産の常緑つる性低木で、木香茨、木香薔薇と書きます。花は白か淡い黄色で、それぞれ一重咲と八重咲があります。花は直径2-3cmで小さいですが、花付きが素晴らしくとても華やかです。花期は4~5月の1ヶ月です。バラと違って一期しか咲きません。黄花の一重や白花には芳香があります。生育が早く、棘がないので扱いやすく、病気、害虫にも強いです。黄モッコウは秋篠宮眞子内親王のお印です。花言葉は「初恋」「純潔」「幼いころの幸せな時間」

シラン(ラン科)
日本・台湾・中国原産。紫色の花を咲かせる蘭なので「紫蘭」です。別名「紅蘭」。栽培品は花壇や庭先などでごく普通に見られますが、純然たる野生種は準絶滅危惧種に指定されています。性質は丈夫で、日当りがよく適度に湿り気のある場所に植えておくとどんどん増えます。地下の偽球茎は白及と呼ばれ止血や痛み止め慢性胃炎に使われます。観賞用に、花が白色のもの、斑入りのもの、淡色花、花弁が唇弁化した「三蝶咲き」などがあります。花言葉は「あなたを忘れない」「お互い忘れないように」「変わらぬ愛」です。
  ウツギ(ユキノシタ科)アジサイ科に分類されることもあります。
日本の山野で見られる落葉性の低木で、中国にも自生しています。名前の由来は枝の芯が空洞なので「空ろな木=空木」、卯月に花を咲かせるので「卯木」です。別名のウノハナは「ウツギの花」の略です。主な開花時期は5月~6月で、枝の先端に1cm程の白花を次々とたくさん咲かせます。葉はフチがぎざぎざして全体に毛が生えてざらざらします。様々な種類があり写真は花びらの外側がほんのり赤色になるアケボノウツギのヴァリエガタ(葉に細く斑が入ったもの)です。


恵まれた土地

  新緑をわたる風が、気持ちのいい季節になってきました。ツツジやハナミズキなど街を鮮やかに彩る花たちが、急に目立ってきました。春から初夏にかかるこの季節は、植物たちが若い瑞々しさに輝いています。

  私は先日、メルボルンに行っていました。
一人の時間が長かったので、のんびりと公園や植物園を散歩して過ごしました。この街は、公園の面積が全体の4分の1を占めます。
広い公園は、本当に人が少なくて、静かです。はるか向こうで、小学生たちがフットボールをしています。池のほとりでは、一組の家族連れがバーベキューをしています。芝生の上を、犬がのびのびと駆け回ります。秋の透明な日差しが降り注ぎ、風が爽やかで、つい「帰りたくない」と呟いてしまうほどでした。
公園にずっと遠くまで広がる芝生は、実に美しく、元気いっぱいです。
「こんなに広い芝生をいったいどうやって管理するの?」と、私は非常に不思議でした。自動潅水システムもついていないし、この広さなら芝刈りも大変でしょう。そう思っていると、ある時偶然、芝刈りの光景を目にすることができました。
耕運機をやや大きくしたような芝刈り車がやって来て、「ドゥ~~ン・ゴゥ~~ン」とダイナミックに走り回ります。ただ、雑に走り回っただけのようにも見えましたが、確かに後には青い香りが漂っています。
この都市は自然を大切にしていて、多くの面積を植物たちに明け渡しています。また多くのこだわりがあるようで、街のあちこちにオーガニックの化粧品や食料品のお店が並んでいます。オフィス街には、大きなスズカケの木が、のびのびと枝を広げ、落ち葉が道路にいっぱい散らばっています。
綺麗な街並みの家の庭には木がいっぱいに植えられています。 どこもあまり強くは剪定をしていないようで、のびのびと育っています。そういえば、街のあちこちでトピアリーを見かけましたが、どれもあまり形にならずに自然なままの枝ぶりでした。
びしっと草花を植え込んだ花壇は、あまり多くは見かけませんでした。
昔、聞いたことがありますが、カナダは冬が雪に閉ざされ白一色になるので、それ以外の季節には花をいっぱい育てて様々な植物の色彩を存分に楽しむそうです。
広い土地と温暖な気候のメルボルンは、あまり手をかけなくても、自然が美しく保たれるので、植物への関わり方が自然体なのかもしれません。
ほんの少しの滞在で、しかも一部しか見ていないので、私の思いは見当外れかもしれません。
でも、広い国土と、多くの資源と、温暖な気候を持った国ゆえの大らかさが、ちょっと羨ましくなりました。

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