早春ですね。寒い日もありますが、ほんのり物憂い暖かな空気にふれると、春を感じて柔らかな気持ちになります。
近所の梅林も、早咲きの梅はすっかり咲き揃い、遅咲きもちらほら咲きはじめています。 最近、我が家のご近所では、空き家や空き地が増えてきています。
普段は忘れ去られたような殺風景な一角ですが、この季節だけは、大きな枝垂れ梅や、ぽつぽつと何本も植えられた梅の木が、白やピンクの花をいっぱい開き、とても華やいだ雰囲気になります。
ちょっと意味合いが違うのですが「主なしとて春な忘れそ」の言葉が思いうかびます。
我が家の隣に住んでおられた奥様は、とてもガーデニングがお好きだったそうです。私達が引っ越してきた時には、ご主人があとをついで、せっせとお世話をしておられました。
庭には大きな槇、梅 、金木犀の木があり、藤棚には藤だけでなくジャスミンも育っていました。我が家との境の低いフェンスの向こうは花壇になっていて、様々な植物が育っていました。 ご主人から、よくどっさりと切り花を頂いたものでした。
手入れの行き届いたお庭が、隣にあるというのは、とても幸運な事です。
まだガーデニング初心者だった私も、お隣を借景にすると、まるですぐれたガーデナーのように、美しい植物たちをいつも間近で見ることができました。ジャスミンの花咲く季節には、リビングまで芳香が漂ってきたものでした。
時は流れ、お隣は空き家になったり、あまり庭に興味のない住人になったりしました。雑草は人の背丈ほどになり、木が茶色くなっていました。誰も足も踏み入れさえしていないようでした。
そして最近、また住人が変わり、 庭は片付けられました。雑草は取り除かれ、枯れた木は伐採されました。槇は切り株になってしまい、藤やジャスミンも無くなりました。
でも、先日ふと気が付くと梅が咲いていました。傷んだ所を取り除かれて、ずいぶん小さくなってしまいましたが、それでも懸命に可憐な花をつけています。
庭って、住んでいる人の幸せがや活力が、溢れ出てくるものなのかもしれません。古い家でも小さな家でも、植物たちが生き生きと幸せそうな家は、住人も幸せな家のように思えて、とてもほのぼのした気分になります。これからはお隣の庭も、新しい主の元で生き生きとした姿を取り戻していくのかもしれません。 |