2012年6月(June)

 6月は『風待ち月』ともいうそうです。先日まであんなに暖かな陽射しを求めていたのが嘘のように、今は爽やかな風を求めてしまいます。でも、この湿り気の多い暖かな空気は植物達には、とても気持ち良さようです。瑞々しく葉を広げ、花を開いています。 
    ミムラス(ゴマノハグサ科)
 北アメリカ西部原産。本来は多年草なのですが、日本では花が咲いたあとに枯れる事が多いので一年草として扱います。花は咲いて3日ほどでしぼみますが新しい花が次々と咲きます。ミムラスはラテン語の手品師の意味で和名はミゾホオズキ。不安を和らげるフラワーエッセンスとして使われる場合もあります。花言葉は「笑顔を見せて」
    シラン(ラン科)
 日本・台湾・中国原産。紫色の花を咲かせる蘭なので「紫蘭」です。栽培品は花壇や庭先などでごく普通に見られますが、純然たる野生種は準絶滅危惧種に指定されています。性質は丈夫で、日当りがよく適度に湿り気のある場所に植えておくと増えます。地下の偽球茎は白及と呼ばれ止血や痛み止め慢性胃炎に使われます。
    セダム(マンネングサ) (セダム科)
 多肉植物なので日当たりのよい乾燥した場所を好みますが、半日陰や湿った場所でも耐えて生育し、その丈夫さから屋上緑化に使われます。種類が多く性質も似通っているので、まとめてセダム(マンネングサ)と扱われることが多いです。ほとんどの種類が背丈が低めでほふく性をもち、多肉質の葉を密生させます。
    スイートピー(マメ科)
 イタリヤ原産。別名:ジャコウレンリソウ。蝶のようなヒラヒラした花と甘い香りが特徴です。やや平べったい茎は巻きひげをからめながら伸びていきます。カラフルで様々な色が揃っていますが黄色だけありません。ちなみに『赤いスイトピー』が流行っていた頃にはまだ赤はなかったそうです。(今はあります)。花言葉は『門出』
    ナデシコ(ダイアンサス)スープラ(ナデシコ科)
 写真の『スープラ』は、花に細かい切れ込みが入る品種で、日本古来から自生する「カワラナデシコ」を改良した品種です。秋の季語として使われる『ナデシコ』ですが、真夏と真冬以外ほとんど開花します。古くから愛され万葉集には26首も詠まれています。「なでしこが花見るごとに娘子らが 笑まひのにほひ思ほぬるかも」大伴家持
    ニオイバンマツリ(ナス科)
 南アメリカ原産。別名:ブルンフェルシア。咲き進むにつれ紫から白に変化する花が特徴で、最盛期にはまるで2色咲きのようになり綺麗です。ニオイという名の通り甘い香りを放ちます。香りは夜に強くなります。熱帯性の花木ですが、寒さに比較的強く、暖地では戸外で越冬できます。花言葉は「浮気な人」。

 

   水を求めて   
 

 

 

 

  日中は暖かいというよりは暑いくらいの毎日です。昼になると、植物達の水を求める声が聞こえるような気がして、あわてて庭に出ます。心なしかしなびて見えたコンテナのペチュニアやニチニチソウ達は、水を貰うと花びらがピンと元気を取り戻すようです。私達はそんなに意識せずに水の恩恵を受けていますが、植物達にとってはまさに「命の水」なのでしょう。そんな植物達を見ていると、ふと母の話を思い出しました。
  私の母は戦争も終わりに近づいた頃、祖父の故郷に疎開していました。住み慣れた大阪の街や仲の良い友人と離れて、とても不自由な生活が始まりました。親はもっと大変なのが分かっていたので、母は文句も言えず、一生懸命その生活になじもうとしていたようです。そんなある日のことです。それまで使っていた井戸が突然枯れてしまいました。水なしでは生活できないので、離れた親戚の井戸まで水を貰いに行かなくてはいけません。祖母(母の母)は体が弱く、男性は水汲みをしない土地の慣わしで、水汲みは母の仕事となりました。天秤棒の両端に桶を下げて、いっぱいの水を入れて運ぶのです。まだ若い都会育ちの女性が、山道を水の入った桶を担いで何度も往復もするのはとても辛いことだったでしょう。途中で躓いて、せっかく汲んできた水が全部こぼれて、乾いた斜面を流れ去ってしまった時には、声を上げて泣いたそうです。
  今はもう快適に暮らしている母にとっては、遠い昔の記憶です。でも、世界のあちこちではまだ、昔の母のように水を求めて苦労している人たちが、いっぱいいる事でしょう。
  自動潅水のスイッチをひねりながら、そんな事を考えていました。
             
ページトップへ