ヒシ(№631)

 秋も深まるにつれ、各地の溜池に繁茂した水草が目立ち始めます。中でも、水面に3~5㎝の菱形の葉を漂わせるヒシが目立つことがあります。この植物は茎に互生の葉を付け、下の葉ほどその葉柄が長く、茎を中心に同心円状に葉がひろがり、水面を覆い隠してしまいます。そのため一面に繁茂すると水中に光が届かなくなり、水中の環境悪化が起こり、害草として駆除対象にされることもあります。
  ヒシ科ヒシ属の1年生水草で、日本全土に分布します。根は水底の土中に伸び、長い茎(2m程度まで伸びることがあります)に葉を付けますが、葉柄が膨らみ浮袋の役をすることで葉は水面に浮きます。茎の途中からは水中根を出します。7~10月に直径1㎝程度の白~淡紅色の一日花を付けます。花後の果実は3~4㎝の菱形で、2本のとげを持ち、子葉に澱粉を蓄え食用になります。この果実を好む鳥(オオヒシクイ)が毎年琵琶湖北部にやってきて賑わいますが、これは近縁種のオニビシを目当てに来るものでこの果実にはとげが4本あります。かつて、忍者が追手の足を止めるためこの果実を撒いたと伝えられておりマキビシなどと呼ばれます。

(*画像をクリックすると拡大されます)

水面に広がるヒシ
▲ヒシの花(葉柄が膨らみ浮袋になっているのがわかる)


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