ゲンゲ(№577)

 かつて、早春の水田はミツバチの飛び交うゲンゲ(レンゲとも言います)の花畑になっていました。これは、ゲンゲの根に共生する根粒菌が空中の窒素を固定するため、ゲンゲを水田で栽培し、田植え前にすき込み窒素肥料として利用していたためです。しかし、水稲の栽培時期が早くなったことや化学肥料が普及したことなどから水田でのゲンゲ栽培はほとんど見られなくなってしまいました。
 ゲンゲはマメ科ゲンゲ属の越年草(二年草)で、中国原産の緑肥植物です。草丈10~25cm、匍匐茎を伸ばして横に広がります。葉は羽状複葉で4~5月に紅紫色の蝶形花を花茎の先端に7~10個輪生します。花後黒い鞘に収まった豆果をつけます。
 緑肥だけではなく、ミツバチの蜜源として重要な役割を果たしましたし、新芽は食用にも利用されました。利尿、解熱の民間薬にも使われたそうです。また、休耕田の雑草対策や家畜の飼料としても利用されましたが農業事情の変化とともに殆ど栽培されなくなってしまいました。
 この花は蝶形花で、旗弁(一番大きくて垂直に立ち目立つ花弁、基部には蜜標がある)、翼弁+舟弁(水平方向に前方へ伸びており、昆虫が止まると開き、中から雌しべ、雄しべが現れる)から成り立っており、ミツバチ程度の大きさの昆虫に適応した形になっています。
 受粉を終わった花は破裂型(雌しべ、雄しべが出たままになっている)となるようで、ミツバチは破裂型の花を避けるのでしょうか。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲ゲンゲ畑
▲ゲンゲの花(雄しべ、雌しべは見えない)
▲ゲンゲの破裂型花(雄しべ、雌しべが見える)
▲ゲンゲの花から吸蜜するセイヨウミツバチ
▲ゲンゲの根(丸い根粒が見える)

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