ネムノキ(№119)

 梅雨の後半、樹冠を薄桃色に着飾った木が見られます。よくご存知のネムノキです。この花を観察してみました。
 枝の先に10数個の花がかたまって咲いています。甘い香りも漂っています。花で目立つのは先端1/3~2/3がピンクで根元が白い多数の糸状のものです。花は、通常花弁を目立たせていますが、ネムノキでよく目立つ糸状のものは雄しべで、その先に花粉を入れた葯をつけています。つまり雄しべが花びらの代わりをしているのです。では花びらは?1個の花をよく見ると、元のほうに目立たない小さな花びらが見えます。ネムノキでは、花びらは完全にその仕事を放棄したようです。
 ところで10数個の花の中央付近の2,3個の花は目立って長く、突出しています。この花は頂花といい花筒が長くその中に蜜を蓄えています。しかも雄しべは両手を広げたような角度で左右に広がっています。他の花は、蜜が殆どなく、雄しべもほぼ真上に伸びています。いかにも頂花は昆虫を呼ぶための役目を担っているように見えます。
 ネムノキは、夜になると葉を閉じます。これは、葉の付け根の膨らんだところ(葉枕)の細胞内の水分変化によるもので、まるで眠っているように見えるのでネムノキと呼ばれます。面白いことに、葉が眠る時間になると花が咲きます。ですから、ネムの花は夜の方が目立つんですよ。この時間帯には、ガの仲間のホウジャクやスズメガなどが活躍します。
 匂い、目立つ雄しべの色、蜜を用意した頂花、ガの活動時間に合わせて開花し、開いていた葉を閉じて花を目立たせる動きなど全てが虫を呼ぶのに好都合なように見えますね。
▲ネムノキ
▲ネムノキの花
▲花の分解


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