マツモムシ(№216)
小さな水溜りの水面を体長11mm~14mmの小さな虫が泳いでいます。長いオールをこいで進む様子はまるでボートです。よく見ると背泳ぎ専門のようです。
このムシはマツモムシといいます。後脚が特に長く、多数の毛が生えていて、ボートのオールの役目をしています。中脚、前脚は主として餌を捕まえるのに使います。カメムシの仲間ですが、アメンボのように水面に浮いている餌だけではなく、水中の小さな生き物も見つけ、口吻を差し込んで体液を吸い取ります。そのために頑丈な口吻を持っており、手で捕まえようとすると刺されて痛い目に会うことがあります。
水中での生活が多いのですが、呼吸は気門(腹部の背中側にある)から空気を吸っています。この空気は、翅の下と体中に生えた毛の間に貯めこんでいるため、水中にいるときは体が銀色に見えます(写真下)。空気ボンベの中にいるような状態ですので、静止するときは何かにつかまる必要があります。しかも、長時間水中にいると呼吸による炭酸ガス濃度が高くなりますが、水中の炭酸ガス濃度との分圧の関係で炭酸ガスが水中へ放出され、替わりに酸素が取り込まれるガス交換をやっているため長時間の潜水が可能になっています。
捕らえようと網を取りに戻っている間に飛んで逃げたようでいなくなりました。
(*写真をクリックすると拡大されます)