ウバユリ(№562)

 ユリの中でも、ユリらしくない葉を持った日本固有種のユリを紹介しましょう。それはウバユリで、日本の中部以西で見られユリ科ウバユリ属の多年生植物です。
 林の中や林縁で見られ、7~8月ごろ、50~100cmほどの茎をのばし、先に数個の花を横向きに付けます。花は10~15cmの筒状、緑白色の花弁でまさしくユリの花です。内部には淡褐色の斑紋が見られ、完全に開ききることはありません。内部の雄しべは6本で花糸の長さはそれぞれ異なり、昆虫がどの位置にいても花粉をつけやすくするような工夫がされているのでしょう。
 葉は他のユリ科植物と異なり長い葉柄を持ち、15~25㎝のハート型(卵状心形)で地際にかたまって数枚が見られます。学名の属名Cardiocurinamuはギリシャ語で「ハート型の葉のユリ」を意味します。英名でもheartleaf lilyと呼ばれ、その葉の形が特異であることを表しています。また葉には網状葉脈が見られ他のユリ科植物とは大きく異なります。この葉は花が咲くころには枯れてしまうことが多いため、「葉=歯」がない「姥ウバ」に例え「ウバユリ」と呼ばれるそうです。
 花後長さ4~5㎝の果実をつけ、中に扁平で軽く、広い翼を持った三角形の種子を約500個程度作り、乾燥によって3裂した果実から種子が風によって飛ばされます。
 ウバユリは1回繁殖型植物と呼ばれ、花をつけずに6~8年生育し、鱗茎(葉柄が肥大した球根)が十分成熟すると開花し、種子を作り(有性生殖)、子供の球根を残し(栄養生殖)て親株は枯死してしまいます。開花前の鱗茎は食用にされ、漢方として解熱、腹痛に有効だそうです。
 中部以北から北海道には変種で大型のオオウバユリが生育します。

 (*画像をクリックすると拡大されます)
▲林縁に咲くウバユリ
▲ウバユリの花
▲おしべの花糸は長さが違う
▲果実
▲果実内の種子
▲種子

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