トノサマバッタ(№448)

 久し振りに河原を歩いてみました。草丈の低い草原からはバッタがたくさん飛び出します。中でも非常に素早く、勢いよく飛翔し着地後はどこかに消えてしまうのはトノサマバッタです。バッタ目バッタ科の中でも大型のバッタでオスは35mm、メスは50mm程度あります。ダイミョウバッタとも呼ばれます。
 前翅には褐色のまだらの斑点があり、後翅には目立つ斑紋はありません。河川敷で丈の低いイネ科雑草が多いところに住み、主としてイネ科雑草を食べていますが時には他の昆虫を食べることもあります。トノサマバッタは生息密度が高密度になると、群生相(集団相)となり、翅が長く、後肢が短く、飛翔力が非常に強くなります。中央アジアやアフリカでは集団で移動しながら植物を食い尽くすことから非常に恐れられていますが日本では北海道や馬毛島での大発生例が知られています。通常のトノサマバッタは孤独相(単独相)と呼ばれ、日本では年2回の発生で卵で越冬しています。
 トノサマバッタを素手で捕まえると咬まれることがあります。またその糞を見ると裁断されたイネ科植物の硬い筋が見られます。どのような歯を持っているのでしょうか。左右1対の大顎を使って植物を噛み切りますが、この大顎を詳しく観察してみました。すると大顎の形は左右異なっており、人の犬歯にあたる部分は剪定ばさみの刃と同じ構造で切り刃と受け刃の1対からできており、その奥には人の臼歯にあたる臼状の部分が見られました。どの進化の過程で左右異なった器官となり、剪定ばさみ同様の刃を獲得したのか、非常に興味が持てます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲トノサマバッタ(褐色型)
▲トノサマバッタ(緑色型)
▲トノサマバッタの糞(植物の筋が見える)
▲トノサマバッタの顔
▲トノサマバッタの大顎(解剖し内側から見た図、剪定ばさみ様の構造)

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