カメノコロウカイガラ(№395)

 冬季は、落葉樹に葉が無く、常緑樹も新葉を出す前で、比較的茎や葉が見やすい状況にあります。そのため時々害虫の発生に気づき慌てる人がいます。しかし冬季間は、害虫の多くも越冬体制に入っており通常の薬剤では十分な効力を発揮できないことが多いものです。冬の防除では石灰硫黄合剤やマシン油が多く使われますが、これも植物が新芽を動かす前でないと植物に薬害を生じるため2月末までの使用に限られます。
 この時期問題になる害虫の一つにカメノコロウカイガラ(カメムシ目カタカイガラ科)が挙げられます。雌成虫は直径3~5mmの半球形で翅は無く、表面はツバ付き帽子のような白いロウ質の殻で覆われています。雄成虫は体長1mm程度で1対の翅があり、飛翔移動し交尾後死にます。年1回の発生で5月下旬頃雌の殻の下に産卵し、孵化した幼虫はしばらく移動が可能ですが、やがて葉脈上を中心に固着し、以降移動せずに大きくなります。しかし落葉樹では葉に固着した成虫は秋季落葉前に枝に移動するのが見られます。
 寄生植物はカンキツ、チャ、カキ、ナシなどの農作物を初めクチナシ、ゲッケイジュ、サザンカ、ツバキ、ヒマラヤスギ、マサキ、モッコク、モチノキ、ヤツデ、シャリンバイ、ハマヒサカキなど多くの庭園樹を加害し、ツタのヘデラにもつきます。植物の篩管に口針(注射針のような口)を刺し込み汁液を吸収し植物を弱らせるだけではなく甘露を出し、これにスス病が発生すると植物の炭酸同化作用が阻害され被害が大きくなります。ロウ物質をかぶっているため防除は難しく、幼虫の発生期を狙って薬剤散布をする必要があります。

(*画像をクリックすると拡大されます)
▲ヘデラ葉脈上の雌成虫(右上は雄の蛹殻)
▲雌成虫の腹面(ピンク色が成虫)
▲ハマヒサカキ枝上のカメノコロウカイガラ雌成虫

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