クサギ(№89)

 晩夏~初秋の頃、野山に白い花を塊状に咲かせる潅木があります。葉に独特の匂いを有するため、クサギと呼ばれます。この匂いは、人にもよるのでしょうが、クサイと言うほどのものではないと思いますが・・・。香りの強い白い花を咲かせた後、紅紫色のガクに紫黒色の果実を付けよく目立つようになります。
 クサギも遺伝子多様性を維持するため、以下のような方法で自家受粉を可能な限り避ける工夫をしています。クサギの花は雄性先熟といって、開花直後は雄花の機能を優先し、花粉を出し訪れた昆虫に花粉の運搬を託します。そのため、花糸(雄しべの軸)は葯(花粉の入った袋)の中央下側についています。つまり、花粉は葯の上面に出ることになり、訪れた昆虫の腹部に花粉が付着しやすくなります。一方、未熟な雌しべは柱頭(雌しべの先端)を下に向け、花粉を付けて訪れた昆虫から花粉を受けにくい状況を保ちます。
 次に、花粉の放出を終えた花の雄しべは、下方に曲がり、それまで下を向いていた雌しべが雄しべに代わって上を向き受粉可能な状態になります。その際、柱頭は開き花粉を受け取りやすい体制となります。群がって咲いている花をよく観察すると、1本の雌しべが下方に垂れたものと、しゃんと上を向いたものがあるのに気づくでしょう
▲クサギの花
▲雄性期の花
▲雌性期の花
▲雄性期に花粉を出す雄しべ
▲雌性期の雌しべ柱頭


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