緑の機能は?


2008年2月27日

ずっと以前、私が駆け出しの社長だった頃、
経営セミナーなるものに参加して勉強する機会がありました。
内容は経営工学でした。
いかに効率良くものを生産するのか。ストップウォッチ片手に
講師の先生の指導のもと、製造現場で実際に測定したりもしました。
数字から分析していくことが新鮮だったので、
私は緑地管理においてもデータを集めてみました。
作業にかかる員数や時間、作業の内容を花壇別に振り分けて、
何の作業や何の植物にコストがかかるのか調べてみようと思ったのです。
例えば、苗の購入費を抑えるために宿根草の花壇にしたけれど、
結局、整枝や剪定などに人力作業が増え、逆に、1年草を一挙に撤去して、
機械で耕した方が安くつくという結果も出ました。
花については開花期間と、かけた手間と、原価から、
どの花がコストに見合うものか調べてみました。
そしてチューリップが結構開花期間に対して、高くつくものだと知りました。
しかし天候も予測が難しく、植物という生き物相手で、
発芽や開花期間も一定ではなく、不確定要因が多く、
うまく標準化できませんでした。
最近ではVE(バリューエンジニアリング)という言葉を目にします。
VEは価値=機能/原価という式で表されています。
最適な選択でよりコストパフォーマンスをあげる工夫のことです。
さまざまな分野で成果を上げている考え方です。
式を簡単に理解すると、価値を上げるためには原価を下げるか、
同じ原価なら機能を上げるということが分かります。
単純には原価を下げる、つまりコストダウンが価値を上げるために行われます。
私の関わる造園業界も同様です。厳しい競争入札は
底知れないほどの価格競争です。
設計はほぼ同じことが多いです。
その中で担当の方の裁量の範囲で業者の私たちもいろんな知恵をしぼります。
特に、緑化において機能は何なのか悩むときがあります。
一番元になる価値に視点を移すと、感性に左右される美的価値は
どうなるのかも気になるところです。
例えば春になると花壇一面のチューリップを
見たくなる気持ちを数字で他のものに簡単に置き換えられるのかなとも思います。
生き物や人の心に左右される緑の分野は、すっきりしない生産管理現場です。
そこが心惹かれるところなのですが。
だんだん実用価値優先で心痛む今日このごろです。

二つ良いことさて無いものよ。 2008年2月18日


2008年2月18日

標題の言葉は、亡くなられた元文化庁長官の
河合隼雄氏が好んで使っておられたという言葉です。
物事が思い通りに運ばないときに、おまじないのように
唱えるのだそうです。
私も真似をして心の中で繰り返します。
世の中二つ良いことは無いけれど、きっと二つ悪いことも無いと。
明日は10年以上関わってきた微生物を含む土壌の
搬入です。見た目はイマイチですが、植物の生育に
頼もしい働きをする土です。
こんな仕事をしていると何の違和感も無く
「土は生きている」と言えます。
普通の人が、そのように思わないのが
不思議なくらいです。
証明するのは簡単です。
ビニル袋にスコップで土(有機質を含む)を入れて、口を閉じるのです。
ものの数分で袋の中が白く曇っていきます。
土が息をしているからです。
正確に言うと、土の中の微生物が呼吸をしているのです。
その土から育まれた植物も土の中では根で呼吸をします。
みんな生きているのです。
長く関わった分、ちょっと特別な気持ちになる
明日の現場作業です。

春は名のみの風の寒さや・・・ 2008.2.12


2008年2月12日

ポカポカ陽気の休み明けは想定外の雨でした。
K専務と、S部長は大切な用事で、市内へ出かけました。
どんなに立場が違っても紳士的な扱いを受けると、
仕事にも張り合いが出ます。
もちろん時には逆の場合もありますが。
思わぬ雪の週末に私は友人のIさんに元気をもらいました。
彼女と知り合ったのは随分昔の、造園のデザインの研修中でした。
当時彼女は住宅関連会社に勤めていました。インテリアにエクステリアと
お客様の要望に答えるうちに、造園の勉強も始めたというわけでした。
センスの良さやプレゼンのうまさは群を抜いていて、
年齢が近いせいもあって親しくなれました。
その後、your partnerという埋もれた逸材を世に出す
コーディネーターの仕事を立ち上げました。
「そんなカッコ良いものじゃないよ。何でも屋だから」と謙遜しますが、
なかなかどうして。彼女の本物へのこだわりは半端ではありません。
しかも主婦業をパーフェクトにこなしながらというところがすごいのです。
すべて人との出会いがスタートです。
現在本格的技術や素材にこだわり、暮らす人の気持ちを
掘り下げて考える、ある意味、効率優先とは真逆の
工務店のお手伝いをしています。半端じゃないと言ったのは、
その手伝いが営業や設計デザインばかりではなく
ときに、竹を裂いて壁に編みこむ作業を含めた大工の手元の
仕事にまで及ぶからです。
そんな毎日の中で、すばらしい木材の切れ端を捨てるのが惜しいと
次に彼女が始めたことが木工です。高野山の師匠の下に通って、
危険な刃物を身体全体で抱え込みながら
くりぬき、廃材で次々に素敵な作品を仕上げます。
それを施主さんに「・・・に使った材でできています」とお渡しするのだそうです。
実は、先日久々に会って、私もその貴重な作品を頂きました。
元は森の中に横たわる古木の楓の倒木を、製材したもので、
先の大工さんがテーブルに仕上げられました。
釘一つ使わず、ジョイントも黒檀です。

森の中で朽ちるだけの木に、
見事に命が吹き込まれました。表面にはシルクのような
白い光沢と玉杢(タマモク)という楓独特の模様が浮き出ています。

その端材で大小二つの丸い鉢を作ってくれたのです。
何か多肉のようなものを入れてみてと言われてできたのが写真のものです。
中に容器を入れています。

ぬくもりのある木肌を触ると、やはり人間も捨てたものではないなあと
つくづく思います。
そして人との出会いやつながりの縁の不思議をしみじみと思います.

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