お庭のあり方


2015年4月8日

雨です。いわゆる菜種梅雨と呼ばれる季節です。
今月に入って、デスクワークが増えました。
リフォームのご提案や花壇の植替えのご提案を考えています。

リフォームのご依頼で以前は「どんな木(花)がお好きですか?」と
伺っていました。
最近はそうではなく、「どんな風に暮らしたいですか?」ということを
お尋ねします。
庭はあくまでそこに暮らす方の生活の彩り部分です。
どんな風に生活を楽しもうとしておられるのかをお伺いしないと
後で「こんなはずじゃなかった庭」を生み出してしまいます。

そういう意味で、昨日お伺いしたお客様は自分の暮らしのイメージを
はっきりと持っておられたのが印象的でした。活き活きと将来の
自分の暮らしを頭に描いておられ、私たちの役割も明確にわかりました。
それに沿って私たちも絞り込んでご提案できます。
でもそういう方は少数派です。
もう1件は、若いご夫婦で、それまで庭の無い生活を楽しんでおられ、
お父様のお庭を受け継がれました。
以前にも書きましたが、お庭は嗜好品です。親子といえど嗜好は違います。
室内ではいろんなこだわりをもって暮らしをしておられますが、
屋外となると、全く初めてのことばかりで戸惑っておられます。
私たちも何とか、お二方の暮らしのこだわりもお庭のあり方に
つながる工夫もしたいところです。
時間をかけてのやり取りが必要になります。

お客様の頭にある漠然とした「夢の庭」を「現実の庭」に近づけたり、
本来何を望んでおられるのかを引き出すのは私たちの役目です。
特に、植物が生きて変化するということや、花は一年のうちである限られた
期間だけのもので、それ以外の姿は葉だけであったりすること。
土と水で雑草は必ず生えること。「きれい」の維持のための「管理」を
どうするのか。など、時に頭に描いておられる夢が萎むようなことも
お伝えする場合もあります。
ただ「水を差す」のは目的ではなく、あくまでもお庭に求めておられること
を突き詰めて、代替案が出せるようにやり取りします。それを、
『予算内』に納めることが私たちのゴールです。
そのときにお客様が判断をしやすくなるために、イメージを絵にします。
私の場合、色鉛筆を使って、せっせと絵を描くので時間がかかります。
巷では立派なソフトも出ていますが、時代遅れのやり方を通しています。

そのお庭のある暮らしに自分の気持ちが入って、ああだこうだと描き込んでいきます。
時に「妄想?」になることもありますが、やり取りの中で軌道修正していきます。
そんな絵のファイルの分厚さが私たちの実績でもあります。


この色鉛筆に変えて何年か経ちます。
意外に減るのは緑系と無彩色です。

管理10割


2014年10月22日

表題の言葉は、今年コンテナガーデニングの研修を受けた時に
講師の先生が言っておられた言葉です。簡単に言うと、造園(お庭、公園、緑地)の
美しさを保つには、管理が大きな比重を持ちます。
もちろん設計もデザインもとても大事ですが、管理されていなければ名園も大なしです。

昨日お伺いしたお客様のお庭は、除草や剪定でお庭の原型が見えてきました。
多分、それぞれの樹木も当時はもっと勢いがあったのかもしれません。
『管理なし』の状態が続くとどうしても荒れてしまいます。鳥のフンからの
実生木もたくさんありました。害虫にやられて弱った木もありました。
雑草の種がこぼれ、カヤの類が大きな株になっています。

 

これが剪定除草前の状態です。高木の剪定と、低木剪定・除草は季節を分けて行いました。

日暮れ近く作業が完成したときには、♪♪『なんということでしょう・・・』状態になります。
前の主の庭へのこだわりがようやく現れてきました。

 
実は庭というのは『嗜好品』なのです。つまり主が変われば
当然庭の在り方も変わります。嗜好が合えば『既存』の庭を管理をし続けることも
ありますが、嗜好は異なる場合が多いです。それは他人ではなく家族でさえです。
代が変わればまたお庭の在り方も変わっていきます。特に大きな影響を与えるのは
庭にかける『時間』の差です。

最近私たちが、提案する庭はいかに管理の時間を減らせるかということを
優先する場合が多くなりました。
土の無いお家も多くなった昨今。庭はとても貴重ですが、しかしみなさまお忙しいのも
現実です。できるだけ、植栽にしても、デザインにしても、また省力化の提案にしても
後々にかかる時間を最初の施工で、減らせる工夫をお客様とやり取りしながら
考えていきます。

とにかく、庭が将来『厄介者』扱いされないようにしたいところです。

今日から校庭芝生のオーバーシーディングが始まります。まずは3回目の芝刈りです。

 

 

 

プチリフォーム


2014年2月18日

米寿を越えても尚現役の書道教室の先生のお宅の玄関前をプチ・リフォームさせて頂きました。
現役でお仕事をなさっているという点では、最高齢のお客様です。
何十年も書道教室をされているため、お弟子さんから贈られた鉢物がどんどん溜まって、
収拾がつかなくなり、ご自身の体力も落ちてしまったと言われました。何もかもご自分でやって来られた
方なので本当は自身できちんとしたいのだけれど・・・と残念そうでした。

玄関の靴箱の上には季節の飾り(今はお雛様です)が置いてあり、壁には書道仲間の方の絵手紙風の
ハガキを手作りのミニ額縁に飾っておられます。全て日常のものを活かして上手に手作りしておられます。
床板は顔が映るくらいに磨いてあり。子どもたちが靴をそろえて上がるようにしつけておられるそうです。
「今の子どもは靴を履く前に一度土間に下りるのよ。だから靴下が汚れないように玄関のタイルも雑巾がけ
しています」と言われ、普段がさつで泥どろになりがちな自身の行動を思い出して胸がチクリとしました。

お元気で、毅然としておられながら「私はいつ死ぬか分からない。私がいなくなったらきっとこの家も
壊すだけだから、予算もあまりかけずにお願いします」と言われました。ボランティアはできませんが、
できる限りのことはします、とお伝えして何度かお伺いしながらご要望を煮詰めていきました。

建物自体はしっかりしていますが、外回りに年月の劣化が見られました。タイルや、石の目地のヒビ。
当初は納まっていた木も成長し、ツゲはポストから取り出すときの邪魔になっています。
元がどんな花壇だったのか当初の植栽の面影があまりないようです。空鉢などもたまり先生のストレスの
元になっていました。「私たちがすっかり見違えるようにしますね!」と言っていたのです、が・・・・
お伺いするたびに、少しずつ片付けておられるのにびっくりです。大正生まれの方の気概を感じました。

一度既存の樹木を剪定して、形を整え、混んでいる葉も透かしました、ひとまずほとんどを撤去しました。
残っていた大きな根っこはできる限り根鉢分を掘り取り、土壌を改良しました。


残したいものだけを選び出し、新植は最低限度にしました。玄関アプローチを挟んで、日が当りにくい側と、
朝日が当る側でイメージを変え。日当たりの悪い方に紅白のナンテンと斑入りオモト。センリョウ、タマリュウで和風に。暗く見えるところには、土留めを兼ねて斑入りヤブコウジで明るくしました。
ツゲは大きく刈り込んで縮めた後はポストの邪魔にならないところに移植しました。何気に植えられていた陶器の鉢も、葉で隠れていた模様が出てくるとちょっと値打ちが出てきました。


左画像;作業前  右画像;作業後

黄色い矢印はポストの位置です

日の当る方は少し花の咲く木を集めました。今まで日陰にあって徒長気味のジンチョウゲや、アジサイも
ここではエネルギーを貯めて花つきがアップしそうです。早春から順番に花が見られるように
セイヨウシャクナゲや、スズランズイセン、イカリソウ、ツワブキなども配植しました。

       
タイルのヒビはタマリュウで隠して玉砂利を敷き詰めました。お弟子さんからの寄せ植えを飾るスペースは残りました。これから何度も花や緑の変化を楽しんでいただきたいです。

取り除いた鉢の類はガレージセールのように、広げていたらご近所の方々に全て嫁入りしたと言っておられました。3人で暖かい午前中での作業でした。

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